エピローグ2「ただいま」
サミュエル・シャイトは動揺していた。
王都の雰囲気がいつもと違う、というのもそうだが、準魔王カル・イーラの転移が急に封じ込められてしまったこともおかしい。
耳をすまさずとも、城下町のほうからいつも以上に賑わう喧騒が聞こえてきてもいる。
「……今日は随分と賑やかですわね」
オフェーリア・ジュラもサムと同じように、違和感を覚えて不思議そうな顔をしていた。
「ふむ。いつものように変態が騒いでいるのではないか?」
「それはそうかもしれないけど、なんか変だなぁ」
ゾーイの言うことはもっともだ。
スカイ王国王都では、毎日変態が賑わっている。今更、少し騒がしくなったとしても、許容範囲の中だろう。
「サミュエル様のお帰りに合わせてお誕生日のお祝いをする予定でしたので、その準備ではないでしょうか?」
準魔王であり、魔王ダグラス・エイドの娘ジェーン・エイドの言葉に、サム、オフェーリア、ゾーイ、カルが「あ」と思い出す。
領地の方でいろいろあったので、すっかり忘れていた。
「そういえば、今日が誕生日かぁ。俺もついに成人か。うーん、長かったなぁ」
「未成年でありながら、宮廷魔法使いになり、爵位を持ち、王女様、伯爵家令嬢方を娶り、王弟様の息子だと判明し、魔王を倒し、魔王になる……波乱万丈すぎません?」
「しかも、まだ王都に来てから半年なんだよねぇ」
「なにそれこわい」
オフェーリアが挙げたように、半年の間でイベントがありすぎた。
その間にも、ウルとの別れと復活、ギュンターの女体化、妻の妊娠、魔王たちとの交流、ラッキースケベ、魔法少女とイベントは山のようににあった。
サムが転生してから、最も慌ただしい日々だったと言っても過言ではない。
「と、とにかく、お誕生日おめでとうございます」
「おめでとうございます、サミュエル様」
「サム、おめでとう」
「サムさん、おめでとうっす!」
「みんな……ありがとう」
みんなからのお祝いの言葉に、サムが照れたようにお礼を言う。
笑顔を浮かべてくれるオフェーリアたち。
異世界に転生してから、いろいろなことがあったが、気づけば多くの人たちと出会い、絆を作ることができた。
間違いなく、自分は幸せ者だと実感する。
そんな時、屋敷からサムの妻でありウォーカー伯爵家の次女でもあるリーゼロッテとアリシアが出てくるのを見つけた。彼女の後ろには、同じく妻である王女ステラ、宮廷魔法使いデライト・シナトラの娘でもあるフランチェスカ、元剣聖の娘水樹、宮廷魔法使い第一席の孫娘花蓮も一緒だ。
「サム!」
「リーゼ、アリシア、ステラ、フラン、水樹、花蓮! ただいま!」
一週間の間、顔を合わせていなかったのに、とても長い時間会っていないような感覚を覚え、ものすごく胸が締め付けられる。
妊婦たちをあまり動かしたくなかったサムは、自らが彼女たちに駆け寄り抱きしめる。
「ふふふっ。サムったら、子供みたいに甘えて。今日から成人じゃない」
「そうなんだけど……寂しかったんです」
「私たちもよ」
リーゼたちが微笑み、サムを抱きしめ返した。
「お帰りなさい!」
愛する妻たちに抱きしめられて、王都に帰ってきた実感が湧いた。
〜〜あとがき〜〜
章を区切らせていただきますわ。
次回から、ついに始まりますわ。
新作も公開しておりますので、何卒よろしくお願い致しますわ!
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