閑話「未来から孫が来ました」④
「まあまあ、ギュンター様! 倒れてしまうのなら、寝室のベッドで!」
目にも留まらぬ速さでギュンターの背後を取って膝枕を始めたクリーから、サムたちはそっと目を逸らした。
「……えっと、ぶっ倒れたギュンターはさておいて……一応、面識がなかったら困るから自己紹介をするね。俺はサミュエル・シャイトです。サムと呼んでくれると嬉しいよ」
「遠藤友也です」
「サムおじさん若いー! 未来だと素敵なイケオジなのに!」
「え? そうなの? イケオジしちゃってるの!?」
「うん! 学校で講師しているんだけど、男女問わず生徒がメロメロなんだよ!」
「……うん、いい未来のようだ!」
「えっと、でも、遠藤友也さんは知らないかな?」
「え!? 僕は未来でサムたちといないんですか!?」
未来ではイケオジになっていると言われ、満更でもない顔をするサムに対し、友也とユーリィは面識がないようだ。
友也としては、サムとしばらく行動を共にしようと思っていたので驚きを隠せないらしい。
「ほ、他の魔王どもはどうしていますか?」
「魔王様たちというと、ダグラスさん、ロボおねーちゃん、あと忘れちゃいけないエヴァンジェリン様! この方たちは結構遊びに来るよ。準魔王様だと、ダフネおねーちゃん、ゾーイおねーちゃん、ジェーンおねーちゃん、カルちゃんに、レームおじさんと、ティナおばちゃん、ボーウッドおにいちゃんもいるかな」
「……そこまで関わりがあって、僕がいない、だと」
「――あ!」
なにか心当たりがあったのか、ユーリィが手を叩いた。
「いたいた! 魔王遠藤友也様! お父さんたちの世代で、あまりにも変態すぎるからって深海に封印された最悪の魔王様でしょう!」
「未来で僕がひどいことになっている!」
吹き出しそうになるのをサムは口に手を当てて堪えた。
まさか友也が最悪の魔王として封じられるなんて――簡単に想像できる。
「僕が何をしたって言うんです!」
「スケベだろ?」
「だとしても、封印って、あまりにもひどい! 未来人を訴えたいですよ!」
「まあまあ、きっと違い未来線から来たんだよ。確定していない未来にあーだこーだ言っても仕方がないじゃない」
「……自分がイケオジだからって!」
納得いっていない友也を宥めつつ、サムはユーリィに尋ねる。
「それで、だ。なんで未来から来たの?」
「ギュンターおじいちゃんが、若さを保っていたクリーおばあちゃんに搾り取られて亡くなってしまった未来を変えるために!」
「しょーもない未来から来たなぁ! 放置でいいじゃない!?」
「クリーおばあちゃんは、自分でおじいちゃんを搾り殺したくせに、世界が悪いのですわ、と言い出して世界中にビンビン因子を撒き散らそうと」
「パンデミック!?」
「とんでもない八つ当たりですね」
クリーは未来でもクリーだった。
「おばあちゃんにも言ったんだけど、この時代というか、今この瞬間、クライド様と一緒に呪術で若さとビンビンを保つ研究をしているんだ。儀式はもうすぐのはずだから、祭壇を壊せば――少なくともおばあちゃんがおじいちゃんを干からびさせることはないと思う!」
「あのビンビン国王も一枚噛んでやがった! 孫が生まれた時代でも、まだご健在かよ!」
ギリギリありえるかもしれないが、クリー同様に、クライドも未来ではクライドのようだ。
「王宮の隠し部屋に祭壇があるはずなんだ! ボクもそれなりに強い自負はあるけど、火力が不安で……サムおじさんのスベテヲキリサクモノで祭壇を壊して欲しい!」
「よし行こう! 今すぐ行こう!」
「……いーんじゃないんですか。未来がビンビンでもなんでも。僕は海の底ですし」
「不貞腐れているんじゃねーよ! 男の子がウジウジすんな! 未来を、救うぞ!」
サム、友也、ユーリィは、スカイ王国王宮にいる元凶のひとりを退治すると同時に、祭壇をぶっ壊すため大きく飛び立った。
〜〜あとがき〜〜
次回、孫編完結です!
本日、書籍2巻発売です! 何卒お手に取っていただけると幸いです!
よろしくお願い致します!
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