閑話「未来から孫が来ました」③




「クリー! 無事ですか!」


 膨大な魔力の高まりと、その魔力がイグナーツ公爵家に降りてきたことに気づいたサムが、ウォーカー伯爵家に遊びにきていたギュンターと、魔王遠藤友也を引き連れて飛んできた。

 しかし、向かってみれば公爵家に変化はなく、クリーはテラスでお茶をしている。ただし、お茶の相手は見たことがない少女だ。どこなくギュンターと似ているような気がするが、気のせいだろうか。

 テラスに着地したサムたちが、声をかけるよりも早く、少女がギュンターの胸の中に飛び込んだ。


「おじいちゃんだ! また会えて嬉しいよ!」

「こ、こら、やめたまえ! お肌ぴっちぴちの美少年を捕まえておじいちゃん呼ばわりとは無礼な! ええい! 離れたまえ! 僕の身体はサムのものだ! これ以上汚さないでくれたまえ!」

「その口上も懐かしいよぉ。うぇーん!」


 少女はギュンターの胸の中で泣き出してしまう。


「……ママ。僕にわかるように説明したまえ。まさかとは思うが、隠し子ならぬ隠し孫ではないだろうね」

「わたくし十二歳なのですが!」

「魑魅魍魎の類であるママならありえる! 生まれた子が一瞬で成長し、男に襲いかかる妖怪になるのだよ! そしてその子がまた子を成し……恐ろしい! スカイ王国が滅びてしまう!」

「……つまり、ギュンター様は今晩もフルコースをご希望、と」

「いやぁああああああああああああああああああああああああ!」


 なんで余計なことを言うのかなぁ、と思うが、きっとこんなやりとりが不器用なふたりのコミュニケーションなのだろうと考える。

 ギュンターたちを放置して、サムは、今も泣く少女になにか引っかかりを覚えた。


「……少女がギュンターくんをおじいちゃんと呼ぶ? いやいや、そんなまさか」


 友也の呟きにサムがハッとした。

 サムは友也と目を合わせると、お互い考えていたことが同じだと悟る。

 せーの、で、推測を口にした。




「「未来から孫がやってきた!」」




 そんな馬鹿な、と笑い合うサムと友也に、クリーが目を見開いた。


「さすがサム様と友也様ですわ! よくお分かりになりましたね!」

「――え?」

「――ま?」


 クリーが手を叩いて称賛し、ふたりは顔を見合わせた。


「嘘だろぉ、本当に孫がきちゃってるんだぁ! なにそれおもしろい!」

「千年以上生きていますけど、時間を移動した者とは初めて会いましたよ」


 タイムトラベラーを目の当たりにして、好奇心に目を輝かせるサムと友也。


「ユーリィ。まずは、ご挨拶を」

「う、うん。そうだったね」


 袖で涙を拭いた少女は、気持ちを切り替えて自己紹介をした。


「ボクはユーリィ・イグナーツです。ギュンターおじいちゃんとクリーおばあちゃんの孫です!」


 刹那、ギュンターが気絶して、その場に倒れた。




 〜〜あとがき〜〜

 ついに明日9月29日(木)書籍2巻の発売です!

 何卒よろしくお願い致します!

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