7「面談です」①





 サムが王宮にいる頃。

 ウォーカー伯爵家では、ゆったりとしたワンピースに身を包んだリーゼが、正装で身を包んだイーディス・ジュラ公爵とテーブルを挟み向かい合っていた。


「オフェーリアの件、ありがとう」

「いいえ」

「リーゼロッテ殿が、誤魔化してくれたおかげで娘は政略結婚だということを知らずにすんだわ」

「ご本人は政略結婚の覚悟をあったようですが、十二歳の子には酷ですから。私も、できることなら、オフェーリア様がサムを愛してくださった上で、ふたりで納得して結婚することが望ましく思います」


 この場にいないサムとオフェーリアには知らされていないことだが、実を言うとふたりは政略結婚をする流れで話が進んでいる。

 最終決定権はサムにあるのは間違いないのだが、できることならふたりがすぐにではなくとも結婚してくれることをリーゼたちは願っていた。


 クライドは、サムに欲がないから貴族たちに恐れられると言ったが、問題はそれだけではない。

 ステラをはじめ、王女と結婚し、果てには魔王や準魔王、そして竜までも縁があるサムとなんとか繋がりを持ちたいと貴族が山のようにいるのだ。いや、貴族だけではない。商人も、それこそ他国の人間も、だ。

 とくに他国の人間は、魔王を招くことができないかと打診がある。

 人身御供のようにサムや他魔王に身分の高く、見目麗しい女性を当てがうとも言っているようだ。


 今までにもサムへの縁談持ちかけはあったが、もうジョナサンでは抑えることができず、クライドに任せていた。

 さすがに国王陛下に無理な縁談を申し込むなと言われれば大人しくなるかと思いきや、今度は水面下でサムに接触しようとする者まで出てきてしまう。

 そこで、リーゼたちから「良し」とされればサムに目通りが叶うという噂を流した。

 すると来るわ来るわ縁談の山が。

 書類選考で九割を断り、残りに一割をリーゼ、ステラ、フラン、水樹が振り分けて面談を行った。

 もちろん、断ることを前提に、だ。

 仮に、本当にサムのことを愛している子がいれば、話は変わったが、残念なことにサムの地位を目当ての者しかいなかった。


 そういう意味では、オフェーリアも不安だったのだが、実際にリーゼが会ってみると違った。

 彼女は、サムに興味津々だった。

 母親が入れ込んでいることや、大陸中の変態がサムに集っているせいで警戒と不安、困惑はあるようだが、彼女自身がサムに想いを寄せてこそいないが、気になる異性としては認識しているようだった。


 リーゼとしては、オフェーリアとサムの政略結婚が上手くいけば、今後の縁談申し込みを断ることが簡単になると考えている。

 ジュラ公爵のもと、家庭教師をつけて、本格的に領地の勉強をしたオフェーリアは、サムの領地運営を全力で頑張ってくれるだろう。

 公爵家とも縁ができるので、サムにとって悪いことではない。

 なによりも、今後、縁談を申し込んできた相手にこう言えるのだ。


 ――ジュラ公爵家のオフェーリアは、領地運営を手伝うことでサムを支えているが、あなたたちは彼のためになにができるのですか? と。


 あまり悪い言い方をしたくはないが、貴族の子女で夫を多方面で支えることができる人間は少ない。

 オフェーリアやステラのように多くを学んだ者や、リーゼや花蓮、水樹のように武芸を学んだ者。フランのように魔法使いとして働ける者。アリシアだけが、他の貴族の子女と変わらない子ではあったが、サムと出会い竜と通じることができる才に気づいた。


 もちろん、勉強をしたから、武芸に秀でているからがすべてではない。

 どれだけ夫を愛し、愛を育むことができるのか、だ。


「リーゼロッテ殿はいろいろ心配しているようだけど、娘に関しては心配しなくてもいいわ。あの子、ちょろい子だから、きっとサミュエルにすぐぞっこんになるわ」

「……そうあってくれればいいと思っています」


 母親の前なので口にしないが、リーゼたちのオフェーリアの感想の中に「割とちょろそう」というものがあった。

 すでにサムに好奇心を抱いているので、時間の問題だとおも思っている。

 ちょろいエヴァンジェリンでさえ、「あいつちょろそう!」と言っていたので、間違いないだろう。

 あとは、サム次第だが、今はさておき、いずれ変化があるだろう。

 花蓮と水樹は、リーゼやアリシア、ステラのように愛情はあとからだ。

 花蓮は、宮廷魔法使い紫・木蓮の勧めで。水樹は、元剣聖雨宮蔵人の人質なのだ。しかし、今では相思相愛の関係だ。

 きっとオフェーリアもそうなるだろう。リーゼには、確信がある。


(さて、一番の問題は――熟女枠にジュラ公爵が立候補していることよね)


 さすがのリーゼも、ジュラ公爵がサムに嫁ぎたいと再婚を願っていることには動揺を隠せないのだった。





 〜〜超お知らせです!〜〜

 8/5(金)電撃コミックレグルスにて、コミカライズ版「いずれ最強に至る転生魔法使い」の連載が開始となります!

 お話はコミックウォーカー様でごらんになれるのでお楽しみに!

 コミカライズを担当してくださるのは『戯屋べんべ』先生です!

 サムの立ち絵などがTwitterにて公開されておりますので、ぜひご覧ください。

 私もほうもあとで近況ノートにUPさせていただければと思います!

 コミカライズ、そして発売中の書籍1巻を何卒よろしくお願い致します!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る