62「酷い光景です」
「――はうっ」
顔面で股間を強打されたギュンターが、痛ましい声をあげた。
サムと、レームが反射的に腰を引く。
魔王が股間に顔を埋めた状態で、ネグリジェ姿で悶絶するギュンターという光景はあまりにも酷い。
「目が腐るような光景だな。つーか、何してんの?」
「……まさかこのタイミングで、よりによってギュンター君にラッキースケベが発動してしまうとは」
「これがそうなの!?」
唖然とするサムにギュンターが顔を向け、痛みに耐えながら言葉を振り絞った。
「……ママから受けた凌辱の数々に比べたら、このくらいの痛み、我慢、できるさ」
「お前はお前で、普段からクリーになにされてんだよ!?」
「もごもご」
「友也もいい加減にしろ!」
体質なのは理解しているが、いつまでもギュンターの股間に顔を埋めている必要はない。
はっきり言って目に毒だ。
「サムの言う通り、そろそろ股間からどいてくれないかな? 君が僕の魅力に我慢できず飛びかかってきたことを責めるほど狭量ではないが、僕の身も心もサムのものだからね。残念ながら君の気持ちに答えてあげることはできない」
心底すまなそうにするギュンターに、慌てて友也が顔を上げる。
「ぶはっ! 誰が告白しましたか!? 僕はこういう体質なんです!」
「――うん? 男の股間に顔を埋めたくなる体質なのかな? それはなんとういうか、変態的な体質だね」
「変態に変態って言われてしまいました!」
叫びながら起き上がろうとするも、なぜかうまくいかないようでうまく立ち上がれない。
その間にも、まるでわざとではないかと疑いたくなるほど、友也の身体がギュンターに触れていく。
「僕に迫って振られたら変態扱いかい? ならば、さっさとどいてもらおう! 妻に誤解されると困るからね! ――こらっ、なぜ立ち上がろうとして僕のズボンの中に手を突っ込むのかな!? や、やめ、やめたまえ! なにをする! わかっているのかい! 君が今握っているのは神聖な神器と同等の存在だぞ!」
(なんでローション塗りたくられたみたいになってんだよ。とういうか、ギュンターも自分の股間を神聖とか、その自信はどこからくる?)
どうしようもないことを考えて現実逃避しているサムをよそに、酷い光景はさらにひどくなっていく。
「いや、あの、変態に謝るのは本当に嫌なんですけど、申し訳ありません。こればっかりは僕の意思でどうにかなるものではなく」
「そんなはずがないだろう、この変態め! あ、こら、にぎにぎするな! 僕はママに調教されたせいで刺激に弱いんだぞ! もっと丁重に扱ってくれたまえ!」
「しりませんよそんなこと!」
「――くっ、いくら魔王とはいえ、僕を汚したとしても心まで奪えると思うなよっ!」
「なにこれー、きんもー!」
ラッキースケベを通り越して、地獄絵図みたいになっている光景にサムは吐き気が込み上がってくるのを抑えられない。
あと、これのどこがラッキースケベなのか小一時間くらい魔王に問いかけたかった。
どのあたりに、ラッキー要素があるのか、と。
「……さすが魔王様だ。いきなり陵辱か」
「……もしかして、私たちもこんな目に遭わされるの!?」
ダニエルズ兄妹に至っては、魔王遠藤友也の矛先が自分たちに向かうのではないかと怯えていた。
こうして、レプシーの兄妹たちとサムの邂逅は、変態二人のせいでぐだぐだとなった。
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