61「ダニエルズ兄妹です」
「さあ、紹介します。レーム・ダニエルズ君と、ティナ・ダニエルズ君だ」
ギュンターにペースを崩された友也であるが、なんとか落ち着きを取り戻すと、転移魔法で呼び出した不機嫌そうな顔をした美青年と美女をサムに紹介した。
「……ダニエル?」
聞き覚えのある家名に、サムがもしや、と思う。
友也はそんなサムの心情を見透かしたように、紹介を続けた。
「ふたりは、レプシー・ダニエルズの血を分けた実の兄妹です」
「……兄妹まで吸血鬼だったのか」
魔王ヴィヴィアン・クラクストンズがレプシーを吸血鬼にしたことは知っている。
ならば、レームとティナという兄妹もヴィヴィアンによって吸血鬼に転化したのだろうか、と考えるが、彼女に会ったときそんなことは聞いていない。
話までのことではなかったのか、と考えたが、レプシーを息子と呼んだヴィヴィアンが彼の兄妹を同様に扱わないわけがないと考え直す。
「君の反応を見ると、ヴィヴィアンはふたりに関して特に何も言わなかったようですね」
「ああ。魔王ヴィヴィアンがふたりを吸血鬼に?」
「違いますよ。そもそもレプシーが血を分けた兄妹が吸血鬼になることに反対でしたので、ヴィヴィアンもその意を汲んで血を与えることはしませんでした」
「でも、実際にふたりは吸血鬼になっているよね」
「当時、他にも力を持ち、魔王を名乗る吸血鬼がいました。そのお馬鹿さんはヴィヴィアンとレプシーへ対抗する駒として、ふたりを吸血鬼にして操ろうとしたのですが――転化を果たしたふたりに用無しとして殺されました」
「それはまた、過激な兄妹ですねぇ」
と、口にしたところで視線の圧を感じて、サムは慌てて口をつぐんだ。
そして、頭を下げる。
「失礼しました。サミュエル・シャイトです」
「……気にしていない。俺は、レーム・ダニエルズ。こっちが妹の」
「ティナよ。よろしくなんてしないから」
挨拶こそしてくれたが、不機嫌な顔を変えないダニエルズ兄妹。
サムの知るレプシーは、人の姿を保っていなかったが、雰囲気に若干の面影を感じた。
「僕は、サムの妻ギュンター・イグナーツさ!」
「……マジか、ここでもそれを言うのか!?」
「もちろんだとも!」
「つーか、お前、男に戻ってるけど、女体化はいいのか?」
「おや? 本当だね。正直、女性の身体には悲しい思い出ができてしまったからね、しばらく男でいいさ」
自身の姿を手探りで確認するギュンター。
そんな彼に、サムはどうしても言いたいことがあった。
「男に戻ったのなら、そのすっけすけなネグリジェを脱げよ!」
「おっと、つまりここで僕と合体したいと?」
「ちげーよ。最近、突っ込むのも疲れてきた。帰ったらクリーに丸投げでいいや」
「そんな恐ろしいことしないでくれたまえ!」
そろそろ恒例になりつつあるギュンターとのやり取りをしていると、
「兄さんを倒した男が変態か」
「気持ち悪っ」
ありえないことにダニエルズ兄弟からサムが変態扱いされてしまっている。
慌てて誤解を解こうとするサムだったが、友也がそれよりも早く声をあげた。
「ギュンター君はこっちに。関係ない子は黙っていようね」
と、友也がギュンターをサムから引き剥がそうとしたのか、近づくと、なぜかなにもないところで急に躓いてしまい――ギュンターの股間に顔を突っ込ませたのだった。
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