25「なにやら企んでいるようです」②
勇人は、今も貴族と談笑しているステラを見て、深いため息をついた。
雪のように白い肌、絹のような美しい白髪、睫毛までも白い。純白の少女はあまりに美しかった。
濃い青のドレスが白い彼女によく映えている。
こんな美しい少女が自分のものになるのだと考えただけで興奮してくる。
人目さえなければ、無理やり魅了してどこかの部屋に連れ込みたいくらいだ。
(貴族のくだらない話を聞かされてかわいそうに。僕が君を幸せにしてあげるよ)
すでに一度、交流パーティーのはじまりの際に挨拶を交わしているが、そのときはステラを魅了するに至らなかった。
魅了する時間が足りなかったのだ。
なによりも、ステラは勇人を一瞥し挨拶しただけ。
まるで興味がないと言わんばかりの態度に腹が立ったが、そんなステラがいずれ自分にのめり込み媚び諂うようになるのだと考えただけで、震えが止まらない。
(――っ、ようやく話を終えたな!)
貴族と話を終えて挨拶をしているステラから目を離さず、他にも彼女と挨拶をしようと集まった男たちを押し除けて近づいていく。
後ろで女たちがなにかを言っているが、知ったことではない。
今は、とにかくステラを手に入れることした勇人は考えていなかった。
「あ、あの、す、ステラ王女様」
緊張に言葉がうまく出てこない。
名をちゃんと呼べなかった羞恥が、勇人を襲う。
しかし、ステラはそんな勇人を笑うことも、気にすることもなく、笑顔を持って迎えた。
「葉山勇人様でしたね。先ほどは、しっかりご挨拶することができず、申し訳ございませんでした。パーティーはいかがですか?」
「はい、それは楽しませていただいています」
まずは、警戒されないように他愛ない話をする。
隙さえあれば、目を合わせるだけ。
それだけで、ステラが勇人のものになる。
「城下町を見て回ったとお聞きしましたが、いかがだったでしょうか?」
「いい街でした。この国が豊かな証拠ですね」
「そう言っていただけると嬉しく思います」
「そんな、事実を言ったまででです。ところで、ステラ王女様、よろしければもっとこの国に関して教えもらえませんか? 僕は異世界から来たので、オークニー王国以外をまるで知らないのです」
「ええ、もちろん構いませんが……その、大きなお世話かもしれませんが、ディーラ王女殿下たちはよろしいのですか? 親しい間柄だと伺っています。そんな女性たちがいらっしゃるのに、わたくしと誤解されたらご迷惑でしょう」
背後にいる女たちを見て、遠慮気味にするステラに、勇人は内心舌打ちをした。
ディーラたちが勇人の恋人であることは隠していない。
というか、隠せない。
仮にも一国の王女と関係を持ったのだから良くも悪くも目立ってしまう。
そのせいでステラが警戒してしまっているのは、好ましい状況ではなかった。
(――ちっ、面倒な女だな。警戒、はしていないだろうけど、ディーラたちに気を使っているのかちゃんと目を合わせようとしない。まったく、忌々しいな)
内心では苛立っているものの、勇人は必死に感情を表に出さないよう努め、笑顔を浮かべた。
「構いませんよ、そんな些細な嫉妬をするような子たちじゃないので。そうそう、ここじゃなんですから、よければふたりきりになれる場所でお話ししませんか?」
「わたくしと、ふたりで、ですか?」
「ええ、ご迷惑でなければぜひ。邪魔されずにお話ししたいです。ここでは、その、できない話もあるので」
ふたりきりと言ったせいで、ステラが若干の困惑を浮かべたことに舌打ちするも、彼女の視線がこちらに動いたことに気づく。
勇人はすかさず、ステラと視線を合わせた。
(やった! 目があったぞ! これでお前は僕のものだ! ――魅了発動!)
勇人には間違いなくステラを魅了した自信があった。
(――ひひっ、これでステラは僕のものだ。たっぷり可愛がってやるっ)
欲望に塗れた思考をしながら、ステラがどんな態度を自分に見せてくれるのか楽しみでならなかった。
子犬のように従順になるのか、それとも雌として発情するのか、なんにせよ胸が踊る。
(さあ、ステラ! 僕に媚びろ!)
にまり、と顔を歪める勇人に、ステラは口を開いた。
「残念ですが、お断りさせてください」
「――え?」
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