第10話:帰宅

 俺は覚悟を決めて手紙を開封し、急いで中身を読んでみた。


「忍へ、玄関に向かって一番右端の屋根裏部屋に軍資金を残す。

 それを使ってカーミラを護れ、俺のように酒や博打に使うなよ」


 あまりに身勝手な内容に手紙を破り捨てたくなったが、他にも何かヒントが書かれているかもしれないので、精神力を駆使して思いとどまる。

 急いで手紙内容に従って屋根裏部屋を漁っていると、なんと金塊が出てきた。

 表の刻印と重さから、一キロのインゴットだと思われる。

 

「カーミラ、俺は金策に行ってくるから、絶対に死なないでくれ」


「余計なお世話だ、わらわは死にたいのだ」


 何を言っても無駄だと分かっていても、つい言ってしまう。

 せっかく手に入れた金塊だから、できるだけ高価に換金したいので、スマホで一番高価に引き取ってくれそうな店を探した。

 今の時代スマホがないと日雇い派遣仕事を探すのも大変だ。

 俺は県庁所在地にある換金ショップで金塊を売った。

 買取価格は六百六十三万三千円だった。


 俺はそのまま今まで住んでいた所まで夜行バスで戻った。

 まとまった金は手に入ったが、金など使えばすぐになくなってしまう。

 できるだけ節約して金を残さないといけないのだ。

 生きていくための必要な最低限のカロリーさえ摂取できればいい。


 一〇〇円ショップで買える食品で考えると。

 菓子パンが一個二〇〇から三〇〇カロリー

 シュークリームが一個三三〇カロリー。

 カップラーメンが一個五〇四カロリー。

 カップ焼きそばが一個七四五カロリー。

 うどん三玉で七一七カロリー

 食パン一斤で八五三カロリー。

 スパゲッティが一〇〇グラムで三八七カロリー

 柿の種一八〇グラムで八九八カロリー。

 小麦粉一〇〇グラムで三六九カロリー。

 砂糖一〇〇グラムで三八四カロリー。


 そんな食べ物は、一〇〇円ショップよりも激安スーパーの方が安く買える。

 一番安くカロリーを取るのなら、小麦粉と砂糖を混ぜたモノを油で焼くのが一番安くカロリーを摂取できるだろう。

 後は醤油と砂糖と水でうどんを煮て食べるかだ。

 だが今は夜行バスで家に戻るまでの間のカロリー補充だ。


 スーパーでカップ焼きそばを二個買って、頭を下げてお湯を分けてもらって食べ、五〇〇ミリリットルで二四五カロリーの高カロリー炭酸飲料を飲む。

 計算では五〇〇ミリリットルで二四五カロリーだが、実際に買うのは割安な一五〇〇ミリリットルの炭酸飲料だ。

 夜行バスの中でも飲むために、三本買っておく。

 念のために柿の種も二袋買っておく。


 家に戻ったら契約を解除して、もてるだけの荷物を持ち、他のモノは処分する。

 住んでいた市町村の役所に行って転出届を出す。

 そしてカーミラの屋敷のある市町村役場に転入届を出すのだ。

 

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