第4話:告白

「敵、ヴァンパイアハンター、ヴァンパイアキラー、クルースニクに対する備えはどうなっているのですか」


「なにもやってはおらぬ、わらわは死にたいのじゃから当然であろう」


「ラノベやアニメでは、使い魔やフクロウ、コウモリ、狼、狐、昆虫を操れるとありますが、本当ですか」


「本当じゃぞ、だがもう百年は使い魔を作っておらんのう。

 動物を操ったのも何時が最後であったかのう、忘れてしまったわ」


「今からでもやろうと思えばできるのですか」


「さて、どうであろうか、随分と力を失ってしまったから、できないかもしれぬ。

 それに操る必要などあるまい。

 わらわは屋敷から出る気もなければ、敵に抵抗する気もないのじゃ」


「駄目です、絶対に駄目です、力を取り戻して生き続けてもらいます」


「身勝手な奴じゃのう、それはお前の考えであって、わらわの望みではない。

 わらわはこのまま滅びたいのじゃと何度言えばわかるのじゃ」


「いいえ、駄目です、少なくとも俺の生きている間は死なないでください。

 いえ、私を眷族にしてください、そして永遠に一緒に暮らしてください」


 言ってしまった、勢いに任せて言ってしまった。

 人生で初めて恋に落ちて、同じく人生で初めてプロポーズしてしまった。

 口から心臓が飛び出てしまいそうになるくらいドキドキしている。

 心臓が破裂しそうだという表現のラノベを読んだことがあるが、全く同感だ。

 心臓が爆発してしまいそうなくらい、ドックンドックンと拍動している。

 返事を聞くのが怖い、恐ろしくて逃げ出したくなる。


「いやじゃ、わらわはもう眷族は作らないと決めたのじゃ。

 それに、わらわは面食いなのじゃ、貴公子以外の血を吸う気はない。

 いや、もう誰の血も吸う気はない、諦めるのじゃ」


 気がついたら、両膝をついて肩を落とししていた。

 いったいどれくらい気を失っていたのだろう。

 茫然自失とはこういうことを言うのだと、どうでもいい事を考えてしまった。

 これは失恋の痛手から逃れるための逃避だと分かっていた。

 分かってはいたが、全く諦める気になっていない。

 今までの俺は、色んなことに諦めて努力もしなかったというのに。

 性格が一変してしまうとは、恋の力は恐ろしいものだな。


「申し訳ありません、ショックで気を失っていました。

 ラノベやアニメの設定で、吸血鬼が美男美女を好むというのを忘れていました。

 俺ごときがカーミラに好まれるはずがないと分かっていませんでした。

 でも絶対にあきらめません、俺がカーミラが好きな事が大事なんです。

 どんな悪辣非道な手段を使ってでも、カーミラに血を吸わせてみせます」


「……物好きな奴じゃのう」

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