第2話 ドライブ

 あれから料理の方法や部屋が散らかった時どこから片付けたらいいかいつもサポートしてくれているこいつに勝手に名前をつけた。ポポル、昔聴いた音楽からちなんでつけた名前だが、ポポルは名前に興味が無いようで、呼んだら返事して欲しいと言うまでポポル、ポポルと脳内で声をかけても返事はなかった。


「え、ポポルってうちの名前やったん?まじかぁ別にいいけど、確かに名前なきゃ不便だもんな」


 こんな感じで正体の分からない謎の声との生活が始まってから1ヶ月程して、久しぶりに運転する機会があったのでドライブをしようと思った。そしたらポポルにはすごく注意されて疲れてすぐ帰って寝てしまった。


「違う!カーブ曲がる時にブレーキ思っきし踏むな!左折は歩行者だけじゃなくて横からバイク来てへんか確認!黄色の単体で点滅してるのは一時停止したら進んでいいんだよ!車間距離空けすぎ、路地から車出てくることあるから近すぎず遠すぎずでいろ!」


 当たり前のことわわ言われてるだけなのに、その当たり前が自分には出来てないんだ、出来ないんだ。普通の人が出来ることを自分は何も出来ないんだ、今まで生きてきてずっとそうだった。家に着いてから布団の中でそんなことを考えてた時、タバコを吸おうと起き上がってふと視線を感じてテレビの前を見るとポポルがいた。というか、姿があるのは分かるのに顔も髪型も何も分からない何かがいた。


「え、ポポル……?ハッキリと見えんけど、ポポルやんな?姿見えるようになってる……」


「んー、いや。うちはポポルだよ、だけど姿が見えるのはお前が見たいと望んだからとちゃう?それとさ、普通の人に出来ることがお前には出来んくても普通の人が出来ないことをお前は難なくこなせるだろ?例えば楽器は何でもすぐに演奏できるし、パソコンなんか資格取れんじゃねってくらい詳しいじゃん、だからそんなに気に病むなよ!」


 ぼんやりとしか見えないポポル、でも確かに目の前で話してる。声も耳から伝わって聞こえてくる。驚きもあったがそれ以上に、自分を認めてくれたことが嬉しくてタバコ吸うのも忘れて泣いていた。


「ほら、そろそろキッチン周り掃除させようと思ってたから泣きやめって。どこから手つけたらいいか教えてやるからさ!」


 結局泣きやめずにひっくひっく言いながら掃除を始めた。誰かに認められたかった、でも、誰も認めてくれなかった。だから自分は何も出来ないゴミクズだって思い込んでた。だけどポポルが褒めてくれて嬉しくて、なんとなくポポルを友達のように思うようになっていた。

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タルパでもイマジナリーフレンドでもないお前は誰なんだ うたまろん @utamarooon

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