4》◆証明~立証不可と提案~◆

 ここは大臣の書斎。この場にはオルタニスとセルジオがいる。


 あれからセルジオはデルシェに手紙を書いてもらいここにきた。



 そして現在、セルジオは立ったままソファに座るオルタニスと話をしている。


「なるほど……済んだらアルベルト伯爵の書簡を返せばいいのだな」


「はい、陛下が自分の下に保管して置きたいとのこと」


「分かった。それでお前も立ち会うのか?」


 そう言いオルタニスは嫌な顔をした。


「勿論です……陛下の許可も得ておりますので」


「そうか……まあいい」


「オルタニス様、私が居ては何か不都合でもあるのですか?」


 そう問われオルタニスはセルジオから目を逸らし溜息をつく。


「いや……何もない。ただ仕事の方が忙しいのではと思っただけだ」


「心遣いありがとうございます。しかしながら私が居なくても然程隊に影響はないので問題ありません」


「なるほど、まあ銃士隊が活躍できる場は今のところないだろうからな」


 オルタニスはそう言い、フフッと鼻で笑った。


「ええ、平和が一番ですので暇なのは嬉しい限りです」


「それならば銃士隊などいらぬのではないのか?」


「そうですね。しかしながら、いつ何があるか分かりません。それに陛下の許しなく隊をなくすことはできませんので」


 そう言いセルジオは目を細めオルタニスをみる。


 そうこう話していると扉がノックされた。その後、トウマとマリエスとレックスが案内され部屋の中に入ってくる。


 そしてトウマ達は挨拶を済ませるとソファに座った。


 その間もセルジオは立たされている。


 トウマはセルジオをみて目を輝かせていた。


(昨日の人だ。セルジオって言うのか……やっぱカッコいいよなぁ。でも、なんで立たされてるんだ? 挨拶では銃士隊の副隊長って言ってたけど)


 そう思いながらセルジオをみている。


(この者が紫の勇者? まるで女性のようだ。アルベルト様からの話では十五歳と聞いている。

 そもそも、このトウマが紫の勇者だと云う証明はまだされていない)


 そう思考を巡らせているとセルジオは不安になってきた。


「なるほど……お前が紫の勇者と名乗る者か。それならば証となる者を持っておるな?」


「はい、勿論です」


 そう言いトウマは紫の宝石をみせる。


「うむ、本物のようだな。だが、それだけでは証拠にならん。証の紋章は、どこにある?」


 そう言われトウマは戸惑い悩んだ。そう、もう一つの紫の勇者の証となる紋章は胸の真ん中の谷間付近にあるためみせられないからである。


「そ、それは……ありますが……服を脱がないとなりません」


「それならば脱げばいい。それとも……嘘を言っているのではないだろうな」


「いえ……嘘はついていません。だけど……」


 トウマはどうしていいか分からず俯いてしまった。


 そんなトウマをマリエスとレックスは心配しみている。


「オルタニス様、申し訳ありませんが。このトウマが本当の紫の勇者なら強いはずですよね?」


「う……そうだな。セルジオ、何が言いたい?」


「これは陛下と先程話していたことなのですが。証を持っていたとしても本物か怪しい、それならば闘技場で強者五人と戦わせて判断した方がいいだろうと」


 それを聞きトウマは光明がみえ喜びセルジオを見据えた。


「それで証明できるのであれば、やらせてください!」


 トウマはそう言い目を輝かせながらセルジオとオルタニスをみる。


「……陛下のお言葉か。だが、じかに聞いていない……確認を取った方がよさそうだな」


 そう言いオルタニスは手紙を書いたあと従者を呼んだ。そしてその手紙を従者に渡すと国王デルシェへ届けろと指示をだした。


 その後、従者は部屋を出てデルシェの下へと向かう。


 それを確認するとオルタニスは再びトウマに、あれこれ聞いていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る