【2章】避けられない戦い

1》◆個々の思い◆

 ここは王都クリスティスの城下町にある宿屋。


 その二階にあるロビーには、トウマとマリエスとレックスが椅子に座って話をしていた。勿論ウッピィは、トウマの肩の上に乗っている。


 因みに、この周辺にはトウマ達以外に誰も居ない。


「まさか、ウッピィが喋るなんてね」


「でも、このことは馬車の中でも話したけど」


「言わなければいいんだよな」


 そうレックスが言うとトウマは頷いた。


「それはそうと……なぜ三部屋にしたのですか?」


「そ、それは……そうそう……一人で居たい時もあるんだ。だから……」


「そういう事か。まあ確かに一人で考えたいこともあるしな」


 そう言いレックスは、ニコッと笑みを浮かべる。


「そうだ。明日は城に向かうけど、マリエスとレックス……どうするんだ?」


「トウマ、勿論……一緒について行きますわ」


「俺も行くからな。絶対、置いていくなよ!」


 そうレックスに言われトウマは苦笑した。


「そうだな。じゃあ明日は全員でってことで、そろそろ自分の部屋にいく……フワァー……眠いし」


「そうね。明日、寝坊できませんもの」


「確かに、そうだな。じゃあ寝るか」


 そう言い三人は各々自分の部屋に向かう。



 ◆§◇§◆§◇



 ここはトウマの部屋。


 トウマは自分の部屋に入るなり扉の鍵をかける。そう、誰かに入られ女である姿をみられないためだ。


「これでいいな。部屋も隣同士にしないで離してもらったし」


「大変でね。これからも、っとこんな感でいけるでひょしょうか?」


「どうだろうな……恐らく何れバレるとは思う。だから……宝石勇者以外の仲間を増やしたくなかったんだ」


 そう言いながらトウマは、ベッドに腰かけた。


「それも、婚約ひゃしゃが仲間でね」


「ああ……最悪だよ。男ならまだいい、同性の女が婚約者って……」


 トウマはそう言い頭を抱える。



 ◆§◇§◆§◇



 ここはマリエスの部屋。


 あれからマリエスはここにくると着替えを始めた。


 そして鏡の前で結っている髪を解くと、クシでとかしている。


「なぜでしょうか……私とトウマは婚約をしたのですよね? それなのに別の部屋……確かに、まだ結婚はしていません。それでも……」


 そう言いマリエスは、つらさのあまり涙ぐんでいた。



 ◆§◇§◆§◇



 ここはレックスの部屋。


 レックスはベッドに仰向けで寝ながら考えごとをしている。


(なんだろう……トウマに抱くこの違和感は? それに、なんで別の部屋にする必要があるんだ。トウマは個別の部屋が落ち着くって言ってたけど。

 ……なんか納得いかない。何か隠してるのか? 宝石勇者だという事は、俺もマリエスも知っている。もし隠すことがあるとしたら……なんだ?)


 そう思考を巡らせながら天井をみつめた。


(考えても分からない……まあそのことはいいか。それよりも、もう一つの疑問……なんでトウマをみると胸が苦しくなる。

 トウマは男であって女じゃないぞ。……だが、そう思えば思うほど……。やっぱり俺は、トウマにやられておかしくなったのかもしれないな)


 そう考え目を閉じる。


 そしてレックスはそのまま寝てしまった。

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