26》♠︎婚約の翌日、王都への旅立ち♠︎
――……翌日。
ここはラガの屋敷の門。その前には、馬車が停車していた。
その馬車のそばでは、トウマがウッピィを肩に乗せマリエスを待っている。
あれからトウマは、婚約披露パーティーを終えると一旦宿屋に戻った。そして荷物をまとめると、その日はそのまま寝る。
それから翌日になり、食事をすませると荷物を持ってラガの屋敷にきた。
そして現在トウマは、ここで待つように言われ待機している。
「遅いな。いくら馬車で王都に向かうって云っても、このままじゃ夜になるぞ」
“そうですね。でも、なんでこんなに遅いのでしょうか?”
「仕度とかかなぁ……女性って結構、時間かかるらしいし」
そう言いトウマは、溜息をつき俯いた。
それからトウマとウッピィは、しばらく待っているとレックスが現れる。それも、なぜか屋敷から出てきた。それだけじゃない、旅でも出るような格好をしている。
「よう……これからよろしくな」
「何を言ってる……そもそも、どういう事だ?」
「俺も一緒に行くことになった。と云っても、さっき交渉してきたんだけどな」
そう言いレックスは、ニヤリと笑みを浮かべた。
「なんのためについてくるんだ? オレは遊びに行く訳じゃないんだけど」
「ああ、聞いた。なんのために旅をしているのかをな。最初は、お前のことが気になっていただけだった。だが、そのことを聞いて余計に興味を持ったって訳だ」
「なるほどな。まぁいいか……却って、その方がいいかもしれないし」
トウマはそう言いレックスをみる。
そうこう話をしていると屋敷からマリエスとラガが出てきた。
「お待たせして申し訳ありません」
「いえ、大丈夫です。話し相手も居ましたので」
「そうか、まあ男同士しか話せんこともあるだろうからな」
そうラガに言われトウマは、心の中で苦笑している。
「村長、了承して頂きありがとうございます」
そう言いレックスは、深々頭を下げた。
「私は、反対したんだけどね」
そうマリエスは言い、レックスを睨んだ。
「二人だけじゃ、心配だろ。それに俺だって、護衛ぐらいできる」
「それは、助かる。まあ、必要ないとは思うけど……話し相手にならいいか」
そう意地悪気味にトウマは言った。
「なんかトゲがある言い方だな。確かに、昨日はトウマに負けた。だが、剣の腕は……」
「そうだな。剣の腕は分からない……でも、戦闘経験がある。昨日やり合って、それは分かった。ってことだから、心配ないと思う」
「トウマ……ああ、足手まといにならないようにする」
それを聞きトウマは微笑んだ。
それをみたレックスは、ドクンっと胸の鼓動が鳴った。それは、徐々に鼓動が速くなる。
(なんだこれは……どうして、こんな気持ちになっているんだ? トウマは男だぞ。それに俺は、そんな趣味ない。
間違いなく、ノーマルなはず……だよな。それなのに……おかしい、昨日から。本当にどうしちまったんだ……訳が分からなすぎだろ!)
そう思いレックスは、トウマをみつめていた。
その様子をみてトウマは、なんで顔を赤くして自分をみてるのかと思い不思議な気持ちになっている。
「……えっと……そろそろ、行かないか? 遅くなるし」
「そうですわね。そういえば、御者は誰がやるのでしょうか?」
「マリエス、馬車は帝都までだ……ハミルで大丈夫だろう」
そう言いラガは、ハミルの方へ視線を向けた。
いつの間にかハミルは、馬車のそばにいる。
「じゃあ、大丈夫ですね」
「そういう事だ。トウマ、マリエスを頼んだぞ」
「はい、分かりました」
トウマはそう言うと、軽く頭を下げた。
その後トウマは、マリエスをエスコートして馬車に乗せる。そのあとからトウマとウッピィが乗った。それを追いかけるようにレックスが乗る。
それを視認するとハミルは、馬車を動かした。そしてトウマ達は、王都へと馬車を走らせ向かう。
それをみてラガは、馬車がみえなくなるまでその場にいたのだった。
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