5》♣︎動物たちの救出〜疑心と警戒〜♣︎

 トウマは、クオレに色々と聞かれ、左手で右肩を覆うように、傷口を押さえながら、どう答えたらいいかと悩んでいた。


 そして、徐々に距離を縮め、近づいて来るクオレに対し、トウマは警戒していた。


(どう答えたら……。だけど、このクオレっていう女。何で、ルディ家の事について、こんなに詳しいんだ?)


「クスっ。ホント不思議ね。このあたしが、坊やの事を、攻撃できないなんてねぇ」


「聞きたい事がある」


「あら、聞きたい事って何かしら?」


 クオレは首を傾げ、トウマを見た。


「やたらと、ルディ家の事について、詳しいみたいだけど……。お前は何者なんだ?」


「そうねぇ。話してもいいけど。その前に、坊やの素性と、名前が知りたいのよね」


 そう言われトウマは、素性を明かす訳にもいかず、どうしようかと戸惑った。


「……素性?何で、お前に話さなきゃならない」


「そう言わず、いいじゃない。どうしても知りたいのよね。そうねぇ。まぁとりあえず、名前だけでもいいわ。教えてくれないかしら?」


「まぁ名前ぐらいなら構わない。トウマだ!」


「トウマねぇ……。あたしの知る限り、その名前に聞き覚えがないわね」


「それよりも、さっきも聞いたけど、お前こそ何者なんだ?」


 そう言いトウマは、クオレを睨んだ。


「あら、怒ってるみたいね」


「ああ、当然だ。いきなり質問攻めで、それも一方的にな」


「それもそうねぇ。それなら、あたしが何故、ルディ家の事について、詳しいのかを、教えてあげるわね」


 クオレは一呼吸おき、更に話し出した。


「あたしの名は、クオレ。……これは、坊やがルディ家と、関係がある者として話すわね」


 そう言いながらクオレは、ビスとダイスを見た。


「そうなると、この2人に聞かれるのは、まずいわ」


「それはどういう事だ?それって、まるで……」


 そうトウマが言うとクオレは、ビスを縄で縛り始めた。


「トウマは、ダイスの方をお願い。それともしもの為、目隠しもね」


「……あ、ああ」


 トウマは、訳が分からず困惑しながらも、クオレに言われるままダイスを、持っていた縄で縛り、目を布で覆った。


「さてこれでいいわね。2人には聞かれたくないから、ここで、おねんねしていてもらうとして」


 クオレは辺りを見渡し、


「あたし達は、離れた場所に移動しましょうか」


 そう言うとクオレは歩き出した。トウマは用心しながら、恐る恐るクオレの後を追った。


(この女……何を考えてるんだ?)

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