4》♣︎動物たちの救出〜戦闘と疑問~♣︎

 トウマは荷馬車に寄りかかるように、身をひそめダイスが来るのを待った。


(相手は警戒してくるはず。それに、あの女が荷馬車の中で、大人しくしているとも限らない。だけど……)


 するとダイスが、キョロキョロと辺りを警戒しながら、荷馬車のものかげから、顔を出した。


 それを確認するとトウマは、すかさずダイスの足もと目掛け、


 《トリプルチェーン!!》


 そう呪文を唱えると、紫の魔法陣が現れ、そこから3本の鎖が飛び出し、ダイスの両足と腰に巻きついた。


「クッ、これは!?」


(よしっ!捕らえた。後は……)


 トウマは即座に、鞘に収まったままの剣を持ち、ダイスの懐に入った。


(イケる!)


 トウマは瞬時に、鞘に収まったままの剣を、左下から右上に、振り上げようとしたその時。

 

 後方から『パァーン!!』と銃から弾丸が放たれた音がした。


 トウマはその音を聞き、咄嗟に地面を蹴り、ダイスを押し倒し、迫り来る弾丸を避けた。


 だが一歩おそく、トウマの右肩をかすめた。


 ダイスは倒れた拍子に、頭を地面に叩きつけ、気絶してしまった。


 トウマは右肩を押さえ立ち上がり、弾丸が放たれた方へと視線を向けた。


 するとクオレが、数メートル離れた場所で、トウマに銃口を向け立っていた。


「あら。これは、なかなか可愛い坊やじゃない。殺すのは惜しいはねぇ」


「クッ!坊やって……オレは……」


 トウマはクオレを睨みつけ、自分は女性だと言いかけたが、言うのをやめた。



 下手に自分の性別がバレ、その事がきっかけで、色々と面倒な事になるのも嫌だった。


 それと、召喚主であるアルベルトに、女性である事は、他の者たちには悟られるなと、言われていたからだ。



「あら?気に触ったのかしら。でも男にしては、綺麗な顔をしているわね。それに身体もそうだけど……」


 そう言いながら、クオレはトウマを品定めするような目で見た。


「オレが女のようだと、言いたそうだな」


「クスッ。そうねぇ。それにしても、よくその体格で、ダイスとビスを倒す事ができたわね」


「何が言いたい?」


「そうねぇ。あたしは、坊やの目的が知りたいのよね」


「目的?」


「そう、この荷馬車……いえ、あたし達を襲った理由。それに、坊やの身なりを見る限り、裕福そうなのでねぇ」


「……」


 そう言われ、どう答えるか迷った。


(流石に、しゃべるうさリスを、もふギュッ!したいからとはいえない。いやそもそも、それだけの理由じゃなかった!)


「どうしたのかしら?お金、目当てじゃない事は明白よねぇ」


「ああ。オレはたまたま、この荷馬車を見つけ近づき、お前たちの話を聞いた」


「という事は……なるほどね。あたし達を倒した後、この荷馬車の中の、動物たちを助ける事が、坊やの目的ってわけねぇ」


「そういう事だ」


「ふぅ〜ん。ねぇ、坊や。あたし達と組まない?悪いようにはしないわよ」


 そう言われ、トウマは首を傾げた。


「何でお前たちと、手を組まないとならない!?」


「フフ……その剣の鞘に描かれている紋章は、ルディ家のものよね?」


 そう言われトウマは、手に持っている鞘を見た。


「……」


(そう言えばこの剣って、屋敷を出る前に、アイツアルベルトがオレにくれた物。

 ってか、気づかなかったけど。これ、ルディ家の紋章だったんだな)


「……って事は、坊やはルディ家の者って事かしら?それとも、その剣は盗んだ物……とか?」


「……」


「そうねぇ。確か領主であるアルベルト・ルディ伯爵は、結婚などされておらず、御子様はいなかったはずだけど……」


 そう言うと、トウマをジーッと見た。


「そ、それは……」


「盗んだ物にしては、あまりにも堂々と、使っているようだし」


(てか、仲間にって、この女なにを考えてるんだ?)


「まぁ、その事について追求しても、仕方ないわね。だけど、その歳で、それだけの腕を持ってるって事は、ただ者ではないわよね?」


「……さっきから、何が言いたいんだ?」


「あらあら、ただ、色々と坊やの事について、知りたかっただけよ」


「知ってどうする?」


「あたしの勘が坊やを、敵にまわさない方がいいと、言っているのよね。だから、仲間にならない?」


「オレはお前たちの、仲間になるつもりはない!それに、この剣は盗んだ物じゃない!」


「なるほどね。それが盗んだ物じゃないなら、やっぱり、ルディ家の縁の者って事になるわね」


「それは……」


 トウマが、どう答えたらいいか悩んでいると、クオレが更に聞いてきた。


「まさか!?坊やが、困った顔をしているという事は……。アルベルト様の隠し子!」


 そう言われ、トウマの顔が青ざめ、頭を抱えながら、


「……アルベルトの隠し子って……いや、違う。てか、それだけは、ぜったい勘違いでも嫌だぁ〜!!」


 と、絶叫してしまった。


「ん〜、それにしても変ね。アルベルト様の事を呼び捨てにするって……。どういう関係なのかしら?」


 そう言いながら、クオレは警戒しつつ、トウマに少しずつ近づいていた。


(しまった!つい嫌な事を言われて……だけど、この場合、どう答えたらいいんだ?)

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