第2話 悪魔がほほ笑む時代のようです。
扉を開けた先には、バスタオルを身体に巻いた少女が立っていた。
髪の毛が濡れていているのでお風呂上りだろうか?
軽く放心しながら少女と見つめ合う。
「キャーーーーーーッ!!!おまわりさん!私です!!」
甲高い悲鳴を上げながら俺は慌てて扉を閉める。
「(やばい・・・!これは逮捕案件では!?」
自分が警察に捕まり、新聞やニュースで報道される等のよくない未来が自分の頭の中で巡っていく。
全身から冷や汗が出てきて膝が笑い出す。今自分の姿をほかの人が見たらかなり滑稽に映っているだろう。
「(落ち着け・・・落ち着くんだ・・・)」
なんとか冷静に今起きたことと、これからすべきことを確認する。
扉や、事前に教えてもらっていた住所等を念入りに確認する。
その結果部屋番号、受け取った鍵も一致している。
ここから導き出される答えは・・・・
先ほどの少女は俺の幻覚だったのだ!
Q.E.D.証明完了!!
「(さぁ気を取り直して、ここから俺の新生活が始まるんだ・・・)」
扉を開くとそこにはバスタオル姿の少女が!
「(はい)」
創田太陽こと推定のぞき魔は考えることをやめた。
少女は急な出来事についていけずに固まってしまっている。
二人の意識が遠くへと旅立っていたところに・・・・
「な~~にやってんだいっ!!この、のぞき魔が!!」
その声とともに尻を思いっきり蹴っ飛ばされる。
その声と衝撃で俺は我に返った。後ろを振り向くと見知った顔がいた。
「おばあ様ー!!違うんです!ほんの出来心だったんです!」
「うるっせーー!認めちまってんじゃねーか!このドアホが!」
「あんたの目の前に熟れたいい女がいるからそっちで満足しときな!」
「熟れすぎてグズグズに腐ってんじゃねぇか!」
「ていうかここで合ってるよね!?ここが今日から俺が住む部屋だよね!?」
「あー・・・そのことを話す前にあの子起こしてくるから待ってな。」
そういうと扉の中に入っていく婆さん。
しばらくすると女の子の声と婆さんの声が聞きながら俺は頭を抱えていた。
・。。・。。・。。・。。・。。・。。・
しばらくすると服に着替えた少女と婆さんが部屋から出てくるとほぼ同時に少女に話しかけられる。
「は、初めまして!今年から高校一年生になります!
少し緊張しながら自己紹介をしてきた少女をみて俺は・・・
「(・・・高校生!?)」
俺が驚いたのは高校生だというところだった。
というものも目の前にいる雪城あかりと名乗る少女はよくて中学生にしか見えないほど小柄だったからだ。
そんな考えが頭の中で巡っていたが、自分も自己紹介を返さなければいけないことを思い出した。
「俺の名前は
と言いつつ深々と頭を下げる。
そのまま頭を下げずに言葉を紡いでいく。
「先ほどの件、すいませんでした。」
「気が動転してしまい、ご迷惑おかけしてほんとうに申し訳ございません。」
「そ・・そんな頭を上げてくださいっ!」
「確かに驚きましたけど、私も悪かったんですからっ」
「(ん?)」
なぜ彼女は自分に非があるような言動をとっているんだ?
そんなことに疑問を持っていると婆さんの口が開く。
「まったくだよ!これから気を付けなよ!これからいっしょに住むんだからね!」
「・・・はぁ???」
「・・・・いやいやいやどういうこと!?」
「へ?えと、お兄さんが一緒に住んでくれるんじゃ・・・」
「いや、住まないよ!?」
「えぇ!!」
「さ・・・貞世さん!どういうことなんですか!?」
謎の少女は婆さんの服のすそにつかんで泣きそうになりながら問いただしている。
「忘れてた。」
そういいながら婆さんはタバコに火をつけ加えながら言い放つ。
この後の会話をまとめると、少女はこの春高校生になるので一人暮らしをしたいと親に言ったそうだ。
しかし、心配性の親は断固拒否。そこで婆さんが介入し、遠い親戚である俺と一緒ならば大丈夫という話になったそうだ・・・・・
いや、おかしくない!?俺がいる時点で一人暮らしじゃないし、そもそも男と一つ屋根の下ってどういうことなの?心配性じゃなかったの?そして一番おかしいのは・・・
「何一つ俺に話が来てないことだ!このババアあああ!!!」
「スーーー・・・ふ~~・・・・」
「え?なんだって?」
だめだこの婆話になんねえ。こうなったら・・・・
「えーと・・・雪城あかりさんだったかな?」
「雪城さんも知らない人と暮らすの嫌でしょ?」
「え?・・・えと、大丈夫です!」
「(大丈夫じゃない・・・俺が大丈夫じゃないんだよ・・・。)」
どうにかして目の前の少女を家に帰そう四苦八苦していたら
「あんた、この子がいなかったら家賃は規定に戻すからね。」
「ふぁっ!!?」
「敷金礼金も払ってもらうよ」
「あぶぶぶぶぶ」
気が動転している俺にさらに追い打ちのように語り掛けてくる。
「いいはなしじゃないか。こんなかわいい子と一緒に住めて家賃も安い。」
「しかもここの住居はなかなかの高レベル。ここで見逃す手はないだろ?」
悪魔が俺に語り掛けてくる。
だが、俺は屈しない!決して!毅然とした態度で断ってみせる!
「よろしくお願いしまーーーーす!!!!!」
今日一番のお辞儀と声が出たのだった。
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