第2話 価値
命の重さが人によって異なるように、命の価値もまた異なる。
テレビのニュースで交通事故により何人死亡、と言われても涙を流す人間がいないように、自分とは縁遠い相手など人は気にも留めないのだ。
大事なのは自分の周囲の者だけ。
自分から遠く離れれば離れるほど、命の価値は低くなっていく。
足下の蟻の命など気にしないように、人間は無意識に命の価値を規定している。
だが、これは主観的価値であり、その価値がそのまま重さに直結するわけではない。そんなもので命の重さは変わらない。もっと大きな流れ、時代によって命の重さは変化する。
それが顕著なのが、戦争だ。
戦争によって兵士も民間人も多くの命が失われた。
だが、抜け殻となった者はその中の一割程度でしかない。
命が失われるのが当たり前の世界。そんな世界で命が重いはずがない。相手を殺し、殺され、傷付き、傷付く。そんなことが日常となっている時代。
しかし、面白いことに終戦に近づくにつれ、抜け殻となった者の数が増えていく。命の重さが少しずつ重くなっていったのだ。
戦争という日常が薄れていったこともあるだろうが、私は単純に数が減ったからだと考えている。
絶滅危惧種の価値が高いように、種としての価値は数によって変わるのは明白だろう。居なくなってしまったら、自然のバランスが崩れてしまうのだから。
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