第6話 凛ちゃんのスキルもすごかった…!

2人は探索を進めていくと、やはり道中ではゴブリンと交戦することがあった。剣を持ったゴブリン、槍を持ったゴブリン、無手のゴブリンや弓を持ったゴブリンなど、ゴブリンのレベルは低いものの、多彩な攻撃手段を覚えているモンスターだった。



 ちなみに、鑑定のスキルを得た瑞希によってゴブリンを観察したステータスは次の通りだった。



――――――――――

ゴブリン


Lv.1


体力  30

魔力  10

気力  5

物理攻撃力 10

魔法攻撃力 6

物理防御力 6

魔法防御力 8

器用さ 7

素早さ 6

幸運 35



――――――――――



 スキルも読み取ることができたが、基本的には持っている獲物に関する武器のスキルを持っているようだった。また、能力値は個体差があったが、平均をするとこのような値だった。



 ステータス面では瑞希や凛華に劣るものではあったが、これが集団になってくるとどうなるかわからない怖さを秘めているので2人は戦闘においても慎重に進めていくのだった。



「そういえば、私たちもレベルアップはしているんだよね…?」


「うん、そうだね。モンスターを倒すとゲームみたいに経験値が手に入るのかレベルが上がってステータスが上昇していくよ」


「それなら日常生活ってどうなっちゃうのかな…?」


「あ~…、それは、ダンジョンに潜っている人たちの話を聞いたことなんだけどね」



 凛華は自分が調べた範囲で、日常生活では強化されてしまったステータスでどうしているか説明した。



 ダンジョンでレベルアップをしていくとステータスが上昇していく。力が強くなっていたり、足が速くなったり、頑丈になったり、人によっては魔法を使えるようになっていく。



 その力加減ができないという人は少なくない人数いる。そういった人たちのためにダンジョン委員会の人たちは講習を開いているようだった。急激に力を得て強気になる人もいれば、周囲から怖がられて心を病んでしまうものもいる。



 そうならないようにステータスを得る前と後で講習を開いて心構えをしておくのだ。もちろん、このように突発的にステータスを得てしまう人もいるから後で講習を受ける人も少なくない人数いる。



 そして、そこでは普段自分たちがどの程度の力で生活を送っているのかを把握をするようにしているのだ。その過程でどうすれば加減ができるのか、意識すればできる人もいれば無意識にできる人もいる。その人がどの程度の力で日頃過ごしていたのか自分の感覚として覚えていくのだ。



 もちろん、そうしたところでどうにもできない人もいるのでそういうときは、多少の費用を要するがステータスを弱体化させる腕輪をつけられて強制的に、ステータスを常人と人と揃えるとえるということも可能である。



 もちろんデメリットもあり、これが自分では外せないということだ。ダンジョン側でステータスを制御できているか確かめ、問題なく制御できるようになれば外してもらえるのだ。


 また、ダンジョンに潜るときは担当の人を読んでもらい、一時的にその腕輪の効果を無くしてもらい、ダンジョンを出たら再び効果を発動させているらしいのだ。さらに、この効果のオン・オフだが、出たときに報告をせずに帰ってしまうようなことがあればペナルティーも生じてしまいかなり厄介らしい。




「……だから、私たちもここを出たときか探索しながら力加減は覚えないといけないかな?」



 凛華は説明を終えるとそのように締めくくった。瑞希は自分が力の加減をできずに周囲の人を傷つけることがないようにしたいと思い、地図を書きながら、(しっかりと力の加減をできるようにしないと!) と意気込んでいた。


 この時の彼女たちは気が付いていないが、ステータスを手に入れて強化された力を得ているにもかかわらず、今までと同じようにペンを持って紙に地図が書けている時点で瑞希は力の制御について問題が全くなかった。


 何故なら力の加減ができなければペンを握りつぶしているはずであり、紙に書いているときも普通の大学ノートなので穴が空いたりしてもおかしくないのだから。




 そのことに気が付くのはダンジョンを出てからになるのだが、2人はダンジョンでゴブリンと戦いながらどんどんと下へと進んでいくのだった。





「そろそろ休憩しよっか」



 凛華はお昼を過ぎ、疲労が溜まってきたところでそのように提案をしてきた。今の彼女たちがいるのは3階層だが、まだこのダンジョンの終わりは見えてきていなかった。



 突発型ダンジョンは規模が小さいものが多く、2階層で終わるものもあれば、10階層で終わったという例があるほどその規模には差がある。今回はどの程度の規模かわからないが、終わりにはボスがいるということらしいのでそれまでにレベルを上げて、万全の準備を整えておきたいのだ。



「うん、そうする」



 瑞希も凛華の提案に頷くと少し開けたところで2人は座って、水を飲んで休んでいた。食料に関しては乾パンなどの非常食はあるが、今消費していいのかわからなかったので比較的余裕のある水だけでお昼を済ませたのだ。



「それにしてもゴブリンが何度も襲ってくるけど、ここってゴブリンしかいないのかな?」


「ど、どうなんだろう…。凛ちゃんは出てくるモンスターの傾向で終わりが分かったりはしないの…?」


「う~ん、突発型ってあまり報告がないからわからないけど、ゴブリンが出て来るのは初級ダンジョンだからね。そこまで深い階層まではないはず…、かな。後はスライムとか洞窟ならコウモリ、森だったらイモムシ、草原ならイヌ、岩場はトカゲだったかな、最下級のモンスターの情報は。」



 凛華は初級ダンジョンで出現したモンスターについての知識を確認していた。凛華は普段の勉強ではここまでの記憶力を発揮するようなことはないが、自分が興味を持って調べたことについてはしっかりと覚えていたようだ。



 瑞希は凛華の知識に驚きつつも、ここが洞窟型のダンジョンであるからコウモリが出現する可能性と、どこでも共通して出て来るスライムにも警戒をする必要があると思い、それらの情報を凛華に聞いた。



「一応最下級って言われているくらいだし、今の私たちでも余裕だと思うよ? スライムはその体が水でできているから打撃系の攻撃とかが効き難いっていうけど、それ以外は有効らしいし、上位のスライムに進化すると危ないらしいけど、下級の内は本当にただの水らしいから中にあるコアを取れば討伐できるみたい。コウモリは飛んでいて面倒だけど、攻撃は血を吸うか噛みつくしかないみたいで、接近してくるからそれに合わせたカウンターが有効、だったかな?」



「凛ちゃんはこういうことは覚えているんだね…」



「そりゃあ、ダンジョンに入るなら情報は集めないとね! …ってこういうことはってどういうことよ」


「いつもの勉強でもこれぐらいしっかり覚えていてくれれば試験前にあんなに大変な目に合うことはないのにって思っただけだよ」


「ま、まぁ、それはそれ、これはこれってことよ」



 凛華は形勢が不利だと悟るとすぐに話題を逸らした。瑞希もこれ以上不毛な言及をするつもりはなかったので逸らされたことについては特に指摘はしなかった。



「と、ところでさ、今のステータス確認しない?」



 凛華の提案で2人はそれぞれのステータスの確認を行った。



――――――――――

名前:黛 瑞希

性別:女

年齢:15歳

状態:疲労


Lv.4


Runk.1


体力  49/49 5UP

魔力  40/44 9UP

気力  24/24 3UP

物理攻撃力  19 5UP

魔法攻撃力  32 6UP

物理防御力  17 2UP

魔法防御力  24 5UP

器用さ 18 7UP

素早さ 15 7UP

幸運  78


ギフト:『思い出』 


スキル

〈武術〉Lv.2 〈逃げ足〉Lv.1 〈根性〉Lv.1 〈剣術〉Lv.3 〈予測〉Lv.2 〈地図作成〉Lv.2 〈無限収納(極)〉Lv.1 〈鑑定〉Lv.5


称号


――――――――――



――――――――――

名前:武藤 凛華

年齢:15歳

性別:女

状態:疲労


Lv.4


Runk.1


体力  55/55 11UP

魔力  22/22 10UP

気力  37/37 11UP

物理攻撃力 32 10UP

魔法攻撃力 18 10UP

物理防御力 25 11UP

魔法防御力 21 11UP

器用さ 16 10UP

素早さ 22 11UP

幸運 92


ギフト『侍』


スキル

〈刀〉Lv.2 〈歩法〉Lv.2 〈集中〉Lv.2 〈気配察知〉Lv.1 New


称号


――――――――――



〈気配察知〉…スキルレベルに応じて生物のいる位置が分かるようになる



「私も瑞希もなんだかんだレベルが上がって強くなっているのかな?」


「う、うん…、レベルも4に上がっているし、スキルを覚えたりスキルのレベルも上がっていたりするみたいだよ…?」


「そうみたいだね。でも、やっぱりなんかこういう探知系のスキルが手に入ってたか。なんとなくゴブリンが居たり、来たりするのが分かるようになっていたから」


「そうなんだ」


「うん。それに、多分私のギフトもかなりヤバイものかも」


「凛ちゃんのスキルも…?」


「だって、私の武器はただの刀だよ? 一応お爺ちゃんが手入れをしていてくれたから今でも使えるっている代物だけど、ダンジョンの魔物に普通に効くわけないじゃん」


「た、確かに…」



 瑞希は言われてみればそうだということを思い出した。彼女は今まで倒してきたゴブリンの攻撃を刀で弾いたり、首を刎ねたりということを普通にしてきたわけだが、ダンジョンで手に入れたもの以外が効き難いという特性を凛華は無視していたのだ。



 凛華はそれについて何かスキルの効果だろうと考えていたようだが、それが〈ギフト〉の〈侍〉の恩恵で今まで武器を容易く扱えていたのだと考えたのだ。



「まぁ、それでもこの刀でも通用するなら、この刀でどこまでもモンスターを斬り捨てて行かないとね」


「物騒だよ、凛ちゃん…」



 瑞希がそう窘めると、凛華は「えへへ」、と笑い2人は顔を合わせて笑い、そのままステータスの疲労状態が回復するまで休憩をした。



「そろそろ行こうか」



 凛華の合図で探索を再開した。探索を再開するお直ぐにゴブリンとの戦闘があったものの、特に苦戦することなく戦闘は終えた。そして、それから数時間ほど通路を行ったり来たりすることがあったものの次の階層に進むことができた。4階層に進んでからはゴブリンだけではなくコウモリも出て来るようになった。



――――――――――


コウモリ


Lv.1


体力  20

魔力  15

気力  10

物理攻撃力 12

魔法攻撃力 8

物理防御力 3

魔法防御力 4

器用さ 7

素早さ 9

幸運 30



――――――――――



 ゴブリンよりは体力や防御力が低いものの、その動きは速く攻撃力も高かった。凛華から事前に情報を得ていたおかげで最初こそはその速度に翻弄をされてしまったが、攻撃のタイミングが〈予測〉でわかるようになってからは面白いように殴ったり、斬ったりとカウンターを決めることができてゴブリンより苦戦することがなかった。



 そして、そのまま探索を進めることさらに1日、2人は6回層にてようやくこのダンジョンの終わりであるボスがいると思われる大扉の前にたどり着くことができた。



「やっとゴールか…」


「長かったね…」


「でも、ここをクリアすれば地上に出れるよ!」


「うん…」




 瑞希は、最初はダンジョンの穴に落ちたときはどうなることかと思ったが、凛華が助けに来てくれて本当によかったと思っていた。



 凛華も瑞希を助けに来たことに後悔もなく、2人でこうしてダンジョンを探索できたことをよかったと思っていた。自分1人ではここまで探索が順調に進んでいたかもわからないのでその点でも瑞希に感謝をしていた。



「じゃあ、行くよ」


「うん…!」




 ボスという存在を目前にして瑞希は緊張して体が委縮してしまっているが、凛華は力強く、「大丈夫、私がついているから」、と目線を送りながら声をかけてくれたおかげで、瑞希も凛華に合わせて力強く返事を返し、凛華がボスがいる大扉を開けて2人は中に入っていくのだった。

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