散歩夜道

 誰もが寝静まる夜のこと。

私は、ふと思い立って散歩に出ることが多くなった。

昔から放浪癖のある私は家族に何も告げずふらりと何処かへ当て所なく歩いていて最近それは、なりを顰め無くなった癖だと思っていたのだが、どうやらいまだ私の中に根強く残っていたようだ。


 夜の道はとても好きだ。

静かな夜道は何もかもを、それこそ“私”という個人を消してくれるから。


 ふと、妄想することがある。

この夜道で突然背後から人が現れ、ただ道ゆく私の背を刺し殺す妄想。

唐突に現れた車に轢き殺される妄想。

それは、現実になればきっと後悔する妄想ばかり。

しかし、それと同時に安堵に包まれて心安らかに死ぬことができるんじゃないかと思ってしまう。


 恐らく私のこれは社会的に見ても理解の得られず、人によっては非難の対象となる考えなのかもしれない。

死ぬ事でしか安堵できない私は、側から見たら頭のおかしい人間なのかもしれない。

しかして、私はそれでいい。

こんな私は誰かの共感を求める事は赦されず、誰かと寄り添う事なんてできないのだから。


私は夜道の散歩が好きなのだ。

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『無名無題』 shion♤ @shion401

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