幕間・9 魔王城
ーー時は少し遡る。
「魔王様!!」
「魔王様大丈夫ですか!!」
玉座で突然倒れた魔王に、部下達が詰め寄る。
「すぐに生贄を!!」
部下の一人がそういうと、別の悪魔達が、牢獄から魔物を一匹連れてきて、そのライフを無理矢理魔王へと献上させた。
すると魔王は立ち上がり、首をポキポキと鳴らした。
「……ふぅ。すまなかったね。苦労をかけた。」
言葉と同時に、パタリという、ライフを失わされた肉塊が床に倒れる音がした。
「いえ、ご無事で何よりです。」
まだ熱のあるそれに気を向ける者は誰も居なかった。
「その、また、でしたか。」
「うん。またアイツだ。全く、困ったものだよ。すぐに死ぬから僕も死ぬ。勇者様は本当、僕に感謝して欲しいよね。」
「全くですね。」
悪魔達のドスの聞いた濁った声に混じって、人間の声がした。
「ああ。来客中だと言うのに。全く申し訳ない。」
「いえ構いません。面白いものを見せて頂きましたし。」
悪魔はその言葉に激怒した。
「貴様!!来賓とはいえ魔王様の死を面白いなどと」
「やめたまえ。」
その言葉を魔王が遮った。
「いいんだ。彼女はそういうものだから。君達は下がっていい。僕は彼女と話がある。」
「……ははっ。」
不服そうではあったが、魔王の命令である。従わないわけにはいかなかった。悪魔達はすごすごと退き、玉座の間を後にした。
「真面目ですね。彼らは。」
「ああ。君より真面目さ。」
「失礼ですね。私はいつだって真面目ですよ?」
「ヒヒヒ、そうだね、真面目に悪事を企んでいる。それで?ここに来たのも新しい悪事を考えるためかい?」
「それもありますが。今向かっている連中が私を狙っている可能性がありまして。」
「ほう。では僕は君を突き出せば良いかな?」
「それでも結構ですがーー恐らく元々の用事は貴方です。貴方の被害は免れませんよ。」
「ヒヒヒヒヒ、言ってみただけさ。僕だってわかってる。勇者様も一緒だろうからね。感じるのさ、僕のライフと繋がった彼が此処に向かっているのをね。」
「そこで。私に少しいいアイデアがございまして。」
彼女ーーポニーテールを白黒のフードに隠した女は、魔王に耳打ちをした。
「ヒヒヒ、ヒヒヒヒヒ。君も中々、悪魔だねぇ。」
魔王が高笑いをあげると、女はクスリと口角を上げた。
「いいえ魔王様。ーー私は人間です。人間だから出来るのです。」
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