第14話 魔界の入り口をぶん殴れ(2)
「ふぎゃぁぁぁぁーっ!!まままままま魔物の群れですよぉぉぉぉぉ!!」
ブレイドが変な声を上げた。腰を抜かして諤々震えている。
「下から攻めてくるとかアホか。」
オレは冷静に指摘した。
「所詮は低脳の魔物共ね。」
ストレアはやはり自分に手を出してきた事にキレているらしく、指をパチンと弾いた。
オレ達の横に岩が発生した。
岩は重力に引かれてーー重力ってなんだ、頭の中に浮かんだがーー地の底へ向かってゴロゴロと音を立てて転がっていく。重さ故にその速度は相当なものだ。
「ふぎ」
「ぐげ」
「ごば」
そんな呻き声を上げながら、魔物達の一部が岩に潰され、そのまま地の底へと転がっていく。
「アーッハッハッハッ!!見なさいあの無様な姿を!!神に手を出した事を後悔するがいいわそう!!文字通り!!地の底で!!」
ストレアは高笑いを上げながら、更に指を弾く。
ザバァッ、という音が頭上で轟いた。
水だ。
それが地面の角度に従って流れ落ちていく。それに足を取られた魔物達もまた流されていく。
「ざまぁないわねヒヒヒヒ!!」
ストレアが気味の悪い声を上げた。
「ヒギッ。」
また槍が刺さった。見ると上にも魔物が居た。囲い込むように待ち伏せていたらしい。ご苦労な事である。
だが下側はほぼ全滅した。これで囲まれる事は無いし、ある程度安全な場所ができた。
「ラン、ブレイドを頼む。下から来る奴らを焼き払ってくれ。」
「わっかりましたぁ!!」
そう言うとランはドラゴン形態へと変身し、魔界の大穴方向へと歩き出した。槍や魔法が飛んでくるが、ランの肉体を貫く事は出来ない。全部弾き落としている。
「くすぐったいですよぉー。」
言うとランは炎を吐き出した。
「ぷぎぃー!!」
「ごぶぅー!!」
「はぴぃー!!」
炎に巻かれた魔物達が情けない悲鳴を上げながら燃え尽き灰になっていく。
「うひゃあ、凄いですねぇ……。」
ブレイドが感心したように声を上げた。
「言ってる場合か。いいから攻撃されないようにしてろよ。」
「そ、そういうわけには。」
ブレイドは背中の剣を抜きながら言った。
「僕も、勇者ですから。」
すると、彼は炎に耐えて近寄ってきたゴブリンの棍棒を聖剣で受け止めた。
「戦います。」
そしてゴブリンの体を真っ二つに切り裂いた。
「ん?」
ストレアが疑問の声を上げた。
「なんで骨折れてないの?」
そういえば。この間オレが叩いた時は腰がポッキリと折れていたはずである。そりゃまぁ、オレとゴブリンとでは大きな差はあるが、それでもただ叩いただけで腰が折れるなら、剣を受け止めただけでも結構なダメージを受けそうなものである。だがそういう様子は無い。普通に受け止め、そして切り返し、ゴブリンの体を真っ二つにしている。
「あの時はオレが力込めすぎたか?」
まぁ今はそれを考えている暇はない。
「後で考えよう。」
そう言ってオレは地を蹴った。
空を舞いながらオレはターゲットを定める。大柄のオークがいる。こいつでいいか。
空のオレに向けて弓矢が放たれた。オレは服に当たる軌道のものだけを見極めてそれを弾く。矢が剥き出しの腕に当たると、カン、という音を立てて落ちていく。矢を放ったゴブリン達が驚愕の眼差しでこちらを見つめてくるのが分かる。
次は魔法だとばかりに、コボルトやデーモンの魔法が放たれる。オレはそれの対となる属性ーー炎には水、氷には炎、風には氷、のようにーーを放ち、それらを相殺させて無効化する。
別に当たっても痛くはない。だが先程の矢もそうだが、服が燃えたり傷付いたりするのが困る。替えを買うのが面倒なのだ。裸だとブレイドが赤面して嫌がるし。
それに、使う機会がない魔法を使えるのはちょっとだけ嬉しい。魔物達も度肝を抜かれたようで腰を抜かしている。
そのままオレはオークの脳天へと両足を揃えて落下した。オークの頭がぐちゃりと音を立てて潰れた。
「ぐぎょっ。」
それが断末魔であった。オレはそのままステップするようにオークの頭から降りた。オークの体がパタリと地面に伏せた。
そのまま地を蹴り近くのゴブリンの顔面に拳を打ち込む。ゴブリンの顔面が吹き飛び、後ろにいたハーピィを撃ち落とした。
コボルト達がその隙に一斉に襲いかかってきた。まだそんなにいたのかと思う程の数であった。振り下ろされる剣。それを抑えるべくオレは自らの腕を掲げた。
カキン。パキン。カラカラ。
硬い金属を叩いた時のような音を立てて剣が割れた。
コボルト達が唖然としているので、オレはその間に、その犬人間共の首根っこに向けて蹴りを放った。周りを取り囲んでいたコボルトの群れの首がすとんと切れて空を舞う。その体は先程のゴブリンのように、地面にパタリと倒れた。
魔物達は恐怖に慄き、武器を構えながらも一歩退いた。魔物も恐怖を抱くのだな、とオレはちょっとした感心を示した。魔物も案外馬鹿ではない。自分達の眼前にいるのが何者かは分からなくとも、少なくとも実力差がーーしかも圧倒的なーーがある事を悟ったのだ。
魔物達がすごすごと後ろに下がっていく。武器こそ構えているが、明らかに尻込みしている。誰もかかってこない。そもそも残っている面子が少ないというのもあるだろう。
「なんだなんだ?もう戦意喪失か?突然襲いかかってきて末路はそれか。」
ちょっと煽ってみる。だが人間の言葉を理解できる奴は少ないらしい。ゴブリンやオークはキョトンとしたままじりじりと近付いたり遠のいたりを繰り返しているだけである。デーモンは理解出来たようで、一人眉間にシワを寄せた奴がいるが、他の奴に取りなされていた。
このまま押し切ってしまおう。
「いいか!!」
オレは叫んだ。
「このまま手を出さないならお前らの事は見逃してやる!!」
「えっ。」
ハーピィを足蹴にしていたストレアが不服そうにいった。いいんだよ。ここで下手に小競り合い繰り返しても大して意味はない。
「だがここから先、オレ達ーー勿論そこの剣士も含むぞーーに手を出してみろ。今やられた奴らがマシに見えるくらいの目に合わせてやるぞ!!」
「なんか暴君の脅し文句みたいね。」
「うるせぇ。」
ストレアの言葉にオレは一言返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます