幕間・7 港にて

 港街ディンフロー。


 黒ずくめの男が人の合間を縫うように歩いていると、突然白黒のフードを被った者に肩を掴まれた。


「誰だ……アンタか。」


「お久しぶりです。お話があります。こちらへ。」


 そうして二人は人気の無い所へ移動する。


「アンタが此処に来るのは珍しいな。」


「少し、事情がありまして。契約の件ですが、一旦打ち切りでお願いいたします。」


「突然だな。」


「我々のことが嗅ぎつけられている可能性があるのです。」


「なるほど。俺の行動から足が着くとマズいってか。」


「ええ。」


「分かったよ。それまでの金は受け取ってるしな。」


「ええ。……それともう一つ。」


「なんだ」


 ブスッ。


 言い終わる前に、男は腹部に強い衝撃を覚えた。


 何が起きたのかと訝しみ、言葉を紡ごうとするが、言葉が出ない。それより前に口の中に液体が、内臓から逆流してくる。苦い鉄の味。血の匂い。それが男の口内に充満していた。


「貴方がバラすとマズいので。手は早めに打つのが一番ですから。」


 白黒のフードを被った人物は、男の腹から腕を抜き取ると、男の黒い服でその血を拭き取り、


「これで私が手を下した事は分かるかもしれない。でもそれ以上は分からない。そう、『もう遅い』んですよ。レイさん。」


 そう呟いて、去っていった。


 男は膝から崩れ落ち、そしてばたりと倒れ、口と腹から血を撒き散らした。


 後に残されたのは、黒い服を纏う男の死体と、漂う死の香りだけであった。

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