幕間・5 その名は
サバイ大臣とトマ司祭が、王の間の外のベランダから、四人の旅人の歩む姿を眺めていた。
「彼らに全てを委ねるのは心苦しいですが。」
「仕方あるまい。わしらはまずこの混乱に満ちた城内を片付けることにしよう。」
「そうですね。」
トマ司祭が部屋の外に出ようとした時、大臣が立ち止まった。
「どうされました?」
「いや、単に気になっただけなのだが、巫女の名前は何だったかな?巫女とばかり呼んでいたので。」
「ああ。普段教会の人間も巫女様としかお呼びしませんからね。それに、理由については私ですら分からないのですが、教会内でも巫女様としか呼ばない決まりになっているので。ご存知ないのも無理らしからぬことです。」
「変な決まりだな。」
「巫女様がそうお取り決めになったと聞いたことがあります。とはいえこの事態ですし。彼女の記憶もないとなれば、今後どうなるかは分かりませんが。」
「記憶がないというのは、なかなか辛いものだろうに。」
「ええ。立派な方です。従うに値するというもの。……それで、お名前でしたね。先程申し上げた通り、あまり公には言わないで頂きたいのですが、貴方にはお教えしましょう。」
トマ司祭は少し間を置いて口を開いた。
「彼女の名前はミア・デュルーアです。」
「そうか。ミア殿か。無事帰ってきてほしいものだ。」
「全くです。」
二人は話し終えると、部屋を後にした。部屋には空の玉座だけが残された。
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