幕間・3 その杯は

 時は少し遡り、レイ達が船と別れた直後の事である。



 ドラゴンの少女とそれに跨った少女二人が空を舞い去っていくのを、船上の彼らは見つめていた。


「一体、彼女らはなんだったんだろう。」


 誰かがボソリと呟いた。彼女らが島に来て数日。たった数日で自分たちの悲願が叶った。彼女らにそれだけの力があったからこそではあるが、それが彼らには理解出来なかった。ただの少女達では無い事だけは理解出来たのだが。


「神の使い、とか?」


 別の誰かが半信半疑で言った。


「まさか。」


 エスティオは一笑に付した。だがもしそうだとすれば。随分と、救いのある話だと思った。時間こそ要したが、神は助けをくれたのだ。彼は元々無神論者ではあったが、少しだけ信じてみようかという考えが、心の中で過った。


 だがそれは後の話だ。今はまず休みたい。彼はそう思った。


「ああ、喉が乾いたのう。」


「お爺ちゃん、これ。」


 その言葉に応えるように、子供が飲み物を差し出した。


「おお、すまんな。」


「そ、それは!?」


 そう言ってエスティオが飲み物を受け取った時、船乗りが声を上げた。エスティオ達、島の住人には知る由も無かったが、彼は船に穴が開いた時にレイ達と会話していた一人であり、そしてドミネア教の信徒であった。


「これ?この船に置いてあったの。」


「この容器が、何か?」


「そ、そ、そ、それは……。」


 船乗りは、見覚えがあった。


 レイ達が教会に行く数時間前に、船旅の無事を祈る為に出航する前に寄った教会で、目にしていた。



 エスティオが持っている容器は、ドミネア神の像が持っていた、命の聖杯と同じ形をしていた。

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