第24話

世論がヤツを非難しているなか、俺は役員会議で、ヤツと会長の退任を提案し、それは承諾された。


腰巾着達が反対したが、数日後に沈黙した。


なぜなら、会長が認可されてない薬物を使用していたのと、ヤツの妻がマルチ商法まがいの事をしていたのを、マスコミに報道されたのだ。


どうやら会長親子を堕落させて、それを盾に縁を切るつもりだったらしい。

しかしその前に、俺が動いたから道連れになってしまったようだ。


とにかくこれで刑事罰を受けて刑務所に入るか、それとも保釈金を払って免れるか。免れたとしても財産は無くなる。何よりも社会的信用を失っただろう。

これでヤツとの因縁は確実に切れるはずだ。




 ずっと会わずにいた義父の家に、俺は一人でやってきた。縁側に座り、互いに月を見ながら酒を呑む。


「ぎりぎりのタイミングだったな。もし会長が在任のままだったら、会社は致命的なダメージを受けるところだった」


「お義父さんにも苦労をかけました。あと少しで終わると思います、そうしたらまた会社に戻ってください」


「私はもういいよ。君のおかげで退屈しない隠居生活だったが、もうこれからは、のんびりさせてもらうよ。……会社をよろしく頼む」


義父に真っ先に辞めてもらったのは、俺を支持してくれた人達の連絡係りを、やってもらうためだった。

表立って連絡出来ない俺の代わりに、秘密裏に連絡を取ってもらい、頑張ってもらった。感謝の気持ちしかない。


俺は無言で頷き、酒を飲み干した。


 翌日の会議で、俺は社長に任命され、それを受けた。

最初の仕事は、もちろん人事だ。


出向や降格していた、支持してくれた人達を呼び戻し、役員にする。そのため、ヤツの腰巾着どもは一掃した。やっと仕返しできたな。


社長室で今回の未来予想の、これまでの事を思い返していた。


今回のは今までと違っていた。


今までは、[◯◯をするように]と、目的を伝えずに指示が着ていたが、今回のは真っ先に、

[社長にします。そのために2年我慢しなさい。]というメールから着たのだ。


おそらく俺が堪えきれないのを、見越していたのだろう。

しかし、結果と期間が分かっていれば、堪えることが出来る。今までの未来予想は間違いはなかった。

だが、最後の最後に裏切る可能性がある。死神は約束を守っても、メールの相手はそうと限らないからだ。

だから、今回のメールは人生最大の賭けだった。


そして、賭けに勝った。


そんなことを考えていると、ノックがあり秘書が入ってきた。


小脇に抱えていたタブレットを俺に見せる。そこには、ヤツが自ら命を絶ったというニュースが載っていた。


「昨夜の事だそうです。どうなさいますか」


香典を出して花は出すな、あとは放っておけと伝える。


そうか、これで本当にヤツとの因縁が切れたんだな。


椅子に深く座りながら、何とも言えない気持ちに包まれた。

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