第23話
厚労省の連中が来たのは、薬機法違反の疑いがある商品についてだった。
それは俺が開発した商品の最後のひとつで、書類上はヤツが直々に開発した事になっている。
なぜそうなったか、もちろんメールの指示だ。
先に成功した新商品の開発し、仕掛けたワナに引っ掛かった俺を、ヤツは舐めた。そのうえ信用もした。
だから最後の商品はわざと効能高めにし、完成を役員会ぎりぎり手前にしたのだ。
結果、ヤツは俺を信用して、そして舐めて、俺の名前を省いて書類を作成したのだった。
ここまで成分が高いと薬扱いになる。となれば、それなりの申請をしなければならないが、それを怠った。
つまり、ヤツのミスとなった訳だ。
ヤツと取り巻きは、俺のせいだとまくし立てたが、どちらにしろ事情聴取の為に、連行されていった。
残された取り巻き達は、どう責任とるんだとまくし立てるが、もう遠慮はいらない。いやもう少しいるが、今はいらないだろう。俺は歌舞伎役者並みに芝居がかって、反論する。
「責任ならとってやる。どうせこの会社はもうダメだ。ヤツ、いや、社長抜きでこれから来る逆風を越えられるのか、社長の顔色をうかがってばかりいたお前達に出来るのか」
昼行灯として、俺を舐めていた奴らが驚いて萎縮する。
「俺なら出来る、これからの逆風を乗りきってみせる」
「やっぱりお前が社長を嵌めたのか……」
「今さらそんな事はどうでもいい、今考えなくてはならないのは、目先の事だ。どうなんだ、社長はあてにならないんだぞ」
俺の迫力に圧されて、指示に従うと応えた。
すぐに役員会を開くように指示をする。連中は我先に飛び出していった。
ドラマの真似だったけど、どうやら上手くいったらしい。さて、仕上げだ。
緊急役員会での俺は、まるで別人のように熱弁をふるった。
その勢いに圧倒され、ほぼ全員が俺に従う流れとなったが、やはり反対する者がいる。
それらは、前社長つまり現会長からの戦友ともいうべき連中だった。
彼らを説得する時間が惜しかったので、まずは商品回収と、お詫びの広告を出すことを決定して、会議は終わった。
翌日、事態は一変する。反対していた会長派が賛同してきたのだ。
「急に風向きが変わりましたね、一体どうしたんです」
「昨夜、会長にお伺いをたてに行ったら、遊び呆けて以前の頼りになる人物ではなくなっていた。どうやら婿である現社長が悪い遊びを教えたらしい。あの人はもうダメだ。そして会長をあんな風にした社長にもついていけない。我々は君を支持する」
予想外の展開だった、いや、これも織り込み済みだったのだろうか。どちらにしろこれは追い風だ。
会社のイメージを落とさないために、俺は東奔西走した。
今まで表舞台にあまり出なかった、というか出たくなかったんだが、ロングセラー商品の開発者であり、最近のヒット商品を開発した実績が背中を押してくれた。
おかげで世論は、問題商品をつくったのはヤツだと信じ始めたのだ。
そんな最中、メールが届いた。
[今まで御利用ありがとうございました。これが最後の未来予想となります。]
いよいよ最後か……
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