第16話
ライバル社に頼らなくても売上げが上がるようになったので、とりあえず倒産の危機は去った。
それに合わせて、生活の保証も帰ってきた。
ここで止めてもよい……、なんて思わない。
やり返さないと分かれば、調子にのって攻めるヤツ。
ライバル社の社長は、そんなヤツだと俺は思っている。こういうヤツには、徹底的に仕返ししなければ。
[明日、役員Aと一緒に昼食をとれ]
予想外の指示が来た。役員Aとは面識が無い、どうしようか。
つき合いの深い経理部長、もうすぐお義父さんになる人に相談すると、理由は分からないが橋渡ししてやるぞと、助けてくれた。
役員Aに、今後の会社の事で相談があるという理由で、部長と同席して昼飯を供にした。
役員Aは、新商品を開発した俺に期待していると言い、部長にはもう少し利益を出せないかと苦言をのたまった。
「お義父……、部長、ひょっとしてAとは不仲なのですか」
「まあちょっとな。役員経費の使い方が荒かったので、意見を言ってから少々煙たがられている」
知らなかったとはいえ、申し訳無いことをした。なにか恩返ししなければ。
[役員Aの金の流れを調べろ]
こういう指示が来たという事は、役員Aはクロということか。
部長に、役員Aの金の流れを調べましょうと提案して、俺も手伝った結果、経費の無駄遣いだけでなく、なんと役員Aはこちらの情報をライバル社に流して報酬を受け取っていたのだ。
この事を社長に報告すると、役員Aは即刻クビとなり、空いた席に部長が入った。
そして空いた経理部長の席に、俺が入ったのだった。
開発課には、まとめ役をやっていた研究員を指名した。
そしてメールの指示と共に添付された化学式を時々彼に渡し、新商品のヒントをくれる頼れる上司として重宝された。
古巣の得意分野に戻って、少しホッとした。あのまま開発課にいたら、いつかボロが出たかもな。
そして俺は彼女と結婚した。甘い新婚生活ってやつをおくっているが、少々気になることがある。
もちろんヤツの存在だ。
新婚生活を覗かれたく無いのはもちろんだが、2人きりで会う場所が無くなってしまったのだ。
どうやって確保しよう。
妻が実家に泊まる日を選んで、死神を呼び出す。
「出てこい、死神ー」
「バンバラバンバンバンー」
ああもやっとする、それじゃないだろうがっ!!
「ご無沙汰しましたね、新婚生活はいかがですか」
「快適だよ。その事と今後の事で話がある」
「心配しなくても、プライバシーは守りますよ。誰だって秘密はありますもんね」
人の考えを読めるヤツが何言ってるんだ、どうせ分かっているんだろう。
「まあいい。知られること自体はもう諦めているからいいんだが、妻が居る時に出てほしくないのと、今後会うなら、何処にするかを考えているんだ」
「ああ、それなら心配無いですよ。私のことが見えるのはあなただけですし、会っている時は結界を張って存在を消しますから」
「つまり、今までどおりということか」
「ラブラブの時は絶対邪魔しない事は約束しますよ。私は約束を守らなかったことは無いでしょう」
たしかにその通りだ。信用するか。
「では、しばらく会わないと思います。復讐、頑張って下さいね」
そう言うと、死神は懐から魔法のランプっぽい物を出すと、その中に煙のように入っていき、ランプは浮き上がり、くるくると回るとすーっと消えたのだった。
ネタが尽きてきたのかな。
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