第11話 来たな、前フリ
娘さんともかなり仲好くなり、じつは部長に内緒で2人きりで食事や映画に行ったりもしていた。
もちろん清い関係だ。未成年を相手にするリスクを背負いたくないからな。
食材もひと通り無くなったところでお開きとなり、奥さんと娘さんはキッチンへ後片付けに、ご両親は居間に休みに、俺と部長は火の始末と道具の後片付けをしていた時、部長が話しかけてきた。
「君が前にいた会社の事を聞いているかい」
「いえ、何かあったんですか」
「社長交代劇で一時期盛り下がっていたけど、新社長が陣頭指揮をとって新商品を開発したそうだ」
「へえ」
「それが特許をとれる代物で、なおかつヒット商品間違いないらしい」
自分を辞めさせた会社だからもう関係無いが、何となく面白くないな。まあそう思うだけだが。
「それがうちの主力商品とかぶっているんだよ、だからちょっと困った事になるかもしれない」
火が完全に消えたのを確かめて、なおかつ水をかけて念押しをした部長の声は、少々深刻に聞こえた。
イヤな感じだな、前フリみたいだ。
俺の頭の中は、しばらく会っていない死神の顔がちらついていた。
ひと月後、やっぱりあれは前フリだったかと自宅でくさっていた。
前会社の新商品は爆発的にヒットし、当社だけでなく他社の商品、いわゆる健康ドリンクだが、それらは壊滅的な売り上げ減となっていた。
特に今の会社は、健康ドリンクが売り上げの7割を占める主力商品だったので壊滅的どころか破滅的だった。
このままだと
冗談じゃない、そうそう何度もリストラの目にあってたまるか。
部屋の真ん中でスマホを前に胡座をかいていた。そう、俺には奥の手がある。しかしどう使うべきかがわからなくて迷っているのだ。
たった10分の寿命とはいえ何度も使いたくない、下手すれば年単位になるかもしれないからだ。
アドバイスが欲しい、となるとアイツを呼び出すしかないか。どうやって呼び出そう、そもそも呼び方とかあるのだろうか。
俺は悩んだが、ふと気がついた。アイツの性格からして、もう知っていてもう後ろに立っているんじゃないだろうか。
「喚びましたか」
とか言って、後ろから脅かそうとしているんじゃないだろうか、いや、絶対そうだろ。
「いるんだろ」
その言葉を待ってましたとばかりに、後ろから死神の声がした。
「死神参上ー」
仮面の忍者か!!
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