第5話

「どのくらいの時間の未来予想なんだ」


「10分内ですね」


「たったそれだけ? 」


「ええ、ですがわりと馬鹿になりませんよ10分って。貴方が知りたくなったとき、それをメールでスマホに送ります」


「ふうん、そもそもなんで寿命が欲しいんだ? まずそれを訊きたい」


「ああ、まあアルバイトですね。私自身の仕事はお迎えだけなんですが、あなた方のいう、いわゆる超常的な存在に部類するので、そういう知り合いがいるのです。その方々は寿命、つまり人の生命力が欲しいのです。それで寿命を全うしてほしい死神と、かち合うので敵対していたのですが、毎回争っているうちに向こうから提案がありまして」


「寿命を合意の上でなら、やり取りしてもいい話になったのか」


「その通り。寿命をすべてひとりの人からではなく、少しずつ相手の合意の上で死期の誤差の範囲ならいいだろうという話になりました」


「それでなんで俺なんだ」

「怒らないでくださいね。あなただけではないのですが、長生きよりも労の少ない人生の方がいい、と思われる方に声をかけているのです」


怒るというより、ムッとした。まあたしかにそうなのだ。無駄に長生きしたくないが、だからと言って、その為の努力も馬鹿馬鹿しいとも思っている。

だが人に言われると面白くないな。あ、死神か。


「たいていの人は、晩年は早く死にたがっているんですよ。身体が死ぬまで元気なのはまれで、寝たきりとかボ……じゃなくて認知症になったり、病院で蘇生装置に繋がられたりしてね。早く楽になりたい楽になりたいっていう最後を迎えるんです」


嫌なことを言うな、このヤロウ。


「私は貴方の寿命は知っていますが、ああもちろんお教え出来ませんよ。ですが、死因と、どんな人生を送るかは知りません。先程も言った通り未来は不確定なので」


「おかしいじゃないか、未来が分からないのに寿命が分かるなんて」


「細かく言えば、何事もなければ最長で生きられる長さ、を知っているのです。ですから不慮の死因等で、より短くなることはあるのです」


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