第2話 訪問者は窓から
平日だというのに、アパートの自分の部屋でゴロゴロしている自分を、客観的にみてみたが、まあそれもありかと受け入れた。
「そんなんでいいんですか」
急に声をかけられて仰天した。声のする方を見ると、いつかの黒づくめがいた。
「な、なんだてめぇ、何処から入ってきた!」
「まあまあそう慌てないで。もちろん玄関からですよ」
黒づくめは玄関の方を指差す。玄関を見ると確かに開いている、おかしいな確かに鍵をかけておいたはずなのに。
「なんで開いているんだ」
「私がそこの窓から入って、中から鍵を開けてから外に出て、あらためて玄関から入ってきました」
なに言っているんだコイツ、頭がおかしいのか? なんにしろ俺の部屋に入っていい理由はない。
「とにかく出ていってくれ、お前に用はない」
「まあまあそう言わずに、話をきいてみませんか。あなたにとって良い話ですよ」
「マルチもねずみ講もネットワークビジネスも宗教もいらん! とにかく出てけ」
「まずはこれを見てください」
そう言って、黒づくめは背は急に高くなった。
足元を見る。足が着いてない。宙に浮いている。
「うわあああはぁぁぁ!!」
俺は大声で叫んだ。すると黒づくめは手を伸ばし玄関に向けると、指先をちょいと動かした。開いていた玄関の扉が、ひとりでに閉まった。
「大声は近所迷惑ですよ、もっとも結界を張ってますから大丈夫ですけどね」
さすがにパニックになった。俺の人生はのんびりと山も谷も無いと思ったのに、こんなやっかいなヤツが来るとは、どうしたらいいんだ。
喜劇なんかでやる、慌てふためく演技をリアルでやった自分に恥ずかしく思うようになって、やっと落ち着いた。
その間、黒づくめはずっと同じ姿勢でにこやかに待っていた。
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