未来予想
藤井ことなり
第1話 邂逅というべきか
とある日曜日、俺は公園のベンチで日向ぼこをしていた。
義務教育が終わり、公立の普通高校から特に特徴の無い大学に行った。高校も大学も担任に薦められたものを選んできたので、特に悩まなかった。
就職も悩まなかった。今の会社はゼミの同級生が受けるからというので、じゃあ俺もと受けて無事入れた。同級生は落ちたな。
ほぼ悩みの無い人生を送ってきたが、今回はさすがに、ちょっと悩んでいる。
「お悩みですか? 」
いつの間にか隣に座っていた男に、声をかけられた。
黒づくめのスーツに黒の帽子、靴や靴下まで黒い。シャツは白だがネクタイも黒、葬式の帰りのようだ。
見ず知らずの人に分かるくらい悩んで見えたのかな、答えずにいると、
「まあ会社を解雇されたら、大抵悩みますよねぇ」
さすがに、ぎょっとした。そんな俺の様子をみて、黒づくめはにこやかに話しを続ける。
「でもまあ、そんなにしょげること無いですよ。あなたには面白い人生が待っていますから」
にこやかに話しかける黒づくめに、面白くない感情がわいてきたので、無言でその場を立ち去った。
リストラされた事を知っているとは 会社の人事の奴だろうか、辞めた人間にわざわざ嫌味を言いに来るとは暇なやつだな。
葬式の行き帰りどちらかで、リストラされた俺を見つけて嫌味を言いに来た。
……不自然だな、さすがにそれは無いか。
喪服に着替えて、俺を見つけて嫌味を言いに来た。
……そこまで嫌われるほどの事をした覚えが無いし、もともと人事課に知り合いはいない。
何だったんだろう? まあいいか、それよりも明日以降の事の方を考えなくては。
だが何も思いつかず、無為に日々を過ごしただけだった。
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