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「雅也、やめろ!」
滅多に呼ばない呼び方で二木が叫ぶけど、もう遅くて…
一回り小さな翔真さんの身体が吹き飛んだ瞬間、俺の視界は真っ暗になった。
「うぅぅっ…、あぁぁぁっっっ…!!!!」
翔真さんが赤く腫れた頬を抑え、すっかり細くなった足をばたつかせ、泣き叫ぶ。
「翔真さん、大丈夫だから…、落ち着いて?」
床に投げ出された翔真さんを抱き起し、二木が宥めるように背中を摩る。
それでも翔真さんが泣き止むことはなく…
「ごめんなさい…、ごめんなさい…、許して下さい…」
大きく見開いた目には、今にも零れ落ちそうな大粒の涙が浮かんでいて…
俺はジンジンと痺れる右手を、ただジッと見つめていた。
「相原さん、風呂の用意して来てくれる?」
二木に言われて、俺はまるで棒のようになった足を、漸く動かした。
蛇口を捻り、浴槽に湯をためる。
少しずつ増えていく湯を見ながら、俺は一つ息を吐いた。
俺、何やってんだろ…
翔さんに手を上げるなんて…
どうかしてるよ…
洗面所でタオルを濡らし、それを手に寝室に行くと、二木の腕の中で、泣き腫らした顔の翔真さんが俺を見上げて…笑った。
良かった…、もう忘れてる…
何事もなかったように笑う顔を見た瞬間、一瞬だけど、俺の中から罪悪感が消えた。
「風呂、すぐ湧くから…。それとコレ…」
二木に向かってタオルを差し出すと、二木はそれを受け取り、翔真さんの腫れた頬に宛てた。
「翔真さん、風呂行こうか?」
「風呂?」
「そう、風呂。そのままでいたら気持ち悪いでしょ? 綺麗にして貰お?」
二木の言葉に、翔真さんが小さく頷くのを確認して、俺は二木の腕から翔真さんを抱き上げると、そのまま脱衣所へと運んだ。
洗濯機に両手を着かせ、身体を支えさせ、茶色い染みを作ったスウェットの下と、紙オムツを下す。
鼻をつく匂いに、思わず吐き気が込み上げるのを、必死で堪えて、汚れた部分をティッシュで軽く拭き取った。
「後はシャワーで流そうね?」
翔真さんが来ていた服を全部脱がせ、俺も裸になると、翔真さんの身体を支えながら、風呂場に入った。
狭い洗い場で、翔真さんの身体を抱えるようにして、下半身に向かってシャワーをかける。
翔真さんの足を伝って変色した湯が風呂場の床に流れていくけど、それに構っている余裕なんてなくて…
「翔真さんごめんね? ちょっと触るよ?」
俺は一言断ってから、シャワーのノズルをフックに引っ掻け、シャワーの向きを固定すると、翔真さんのお尻の割れ目に指を滑らせた。
小さく窄んだ穴の周りにこべりついたのを指で撫でて洗い、それが終わると前にも手を伸ばした。
薄く生えた毛に絡み付いているのを指で梳いて落とし、垂れ下がった中心の細かい皺の間や袋に至るまで、綺麗に洗い流した。
自分の手が汚れるのに、匂いだって鼻について離れないのに、不思議と”汚い”なんて思わなかった。
好きだから、愛してるから、なんて感情じゃなくて、ただ相手は何も分からない小さな子供と同じ、そう思ったら抵抗なんて感じなかった。
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