3
「ご、こめんなさい、俺…」
俯いた顔が熱く感じるのは、シャワーのせいだ。
絶対…そうだよ…。
「ちゃ、ちゃんと温まって下さいね? シャンプーとか、適当に使ってくれて構わないんで…。じゃ…」
桜木翔真“もどき”を椅子に座らせ、シャンプーのボトルを手に握らせ、俺は風呂場を出た…が、
「えっ、何やっての!」
俺の足はまた風呂場にUターンをした。
だって、あろうことか桜木翔真“もどき”がボトルの蓋を開け、注ぎ口に唇を寄せていたから…
「そ、それ、違うって!」
慌てて取り上げたボトルを、桜木翔真“もどき”が恨めしそうに見上げる。
そして返せと言わんばかりに、俺に向かって手を伸ばしてきた。
何? 一体何なのこの人…
絶対おかしいって…
俺は桜木翔真“もどき”を家に連れ帰ったことを、後悔し始めていた。
「ふざけてんですか?」
そう、まるでふざけているとしか思えない行動。
俺は半分キレ気味にボトルのキャップを拾い上げると、それをボトルに嵌め込んだ。
「さっさとシャワーしちゃって下さい」
水道代だってバカになんないんだから…
深い溜息を落とす俺を、キョトンとした顔で見上げる桜木翔真”もどき”。
もしかして、分かってないのか…?
噓だろ?
マジ、ありえねぇ…
ふざけているのか、それとも本当に分かっていないのか…
疑いながらも、俺は濡れてしまったスウェットを脱いだ。
伸び放題で絡まった髪をシャンプーで洗い、ボディーソープをたっぷりと含ませた垢すりタオルで身体を洗った。
最後に顔の半分を覆う髭を剃ってやった。
その間もずっと、桜木翔真”もどき”はじっと大人しく、声一つ発することはなかった。
身体が温まって来たことを確認して、俺達は風呂場を出た。
バスタオルで火照った身体を拭いてやると、モジモジと膝を擦り合わせ始めた桜木翔真“もどき”。
もしかして…?
「ちょっと待って、トイレはコッチ…!」
裸のまま、向かいのトイレに押しやる。
便座に座らせ、ドアを閉めた。
何なの、コレ…
何かのドッキリ?
だったら超タチが悪いんだけど…
俺はガックリと肩を落とし、溜息をまた一つ落とした。
「終わりました?」
そっとドアを開け、声をかける。
トイレはちゃんと?出来たみたいだ。
俺はホッと胸を撫で下ろした。
トイレから出てきた桜木翔真“もどき”に服を着せ、ドライヤーで髪を乾かしてから、俺は漸く遅めの晩飯にありついた。
朝飯用にと二つ買った弁当の一つは、桜木翔真“もどき”の物になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます