「ご、こめんなさい、俺…」



俯いた顔が熱く感じるのは、シャワーのせいだ。

絶対…そうだよ…。



「ちゃ、ちゃんと温まって下さいね? シャンプーとか、適当に使ってくれて構わないんで…。じゃ…」


桜木翔真“もどき”を椅子に座らせ、シャンプーのボトルを手に握らせ、俺は風呂場を出た…が、


「えっ、何やっての!」


俺の足はまた風呂場にUターンをした。


だって、あろうことか桜木翔真“もどき”がボトルの蓋を開け、注ぎ口に唇を寄せていたから…


「そ、それ、違うって!」


慌てて取り上げたボトルを、桜木翔真“もどき”が恨めしそうに見上げる。


そして返せと言わんばかりに、俺に向かって手を伸ばしてきた。



何? 一体何なのこの人…

絶対おかしいって…



俺は桜木翔真“もどき”を家に連れ帰ったことを、後悔し始めていた。


「ふざけてんですか?」


そう、まるでふざけているとしか思えない行動。


俺は半分キレ気味にボトルのキャップを拾い上げると、それをボトルに嵌め込んだ。


「さっさとシャワーしちゃって下さい」



水道代だってバカになんないんだから…



深い溜息を落とす俺を、キョトンとした顔で見上げる桜木翔真”もどき”。



もしかして、分かってないのか…?


噓だろ?

マジ、ありえねぇ…



ふざけているのか、それとも本当に分かっていないのか…


疑いながらも、俺は濡れてしまったスウェットを脱いだ。


伸び放題で絡まった髪をシャンプーで洗い、ボディーソープをたっぷりと含ませた垢すりタオルで身体を洗った。


最後に顔の半分を覆う髭を剃ってやった。


その間もずっと、桜木翔真”もどき”はじっと大人しく、声一つ発することはなかった。


身体が温まって来たことを確認して、俺達は風呂場を出た。


バスタオルで火照った身体を拭いてやると、モジモジと膝を擦り合わせ始めた桜木翔真“もどき”。



もしかして…?



「ちょっと待って、トイレはコッチ…!」


裸のまま、向かいのトイレに押しやる。


便座に座らせ、ドアを閉めた。



何なの、コレ…

何かのドッキリ?


だったら超タチが悪いんだけど…



俺はガックリと肩を落とし、溜息をまた一つ落とした。


「終わりました?」


そっとドアを開け、声をかける。


トイレはちゃんと?出来たみたいだ。


俺はホッと胸を撫で下ろした。


トイレから出てきた桜木翔真“もどき”に服を着せ、ドライヤーで髪を乾かしてから、俺は漸く遅めの晩飯にありついた。


朝飯用にと二つ買った弁当の一つは、桜木翔真“もどき”の物になった。

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