2
メットインを開け、メットを取り出し、そこに買ったばかりの弁当とペットボトルの袋を放り込んだ時、、
そう言えばさっきの人…
ふとあのホームレスの事が頭を過ぎる。
まさかな…
違うよな…
だってあの人は…
でも、あの声といい、“目”といい…
他人と言うには、余りにも似ている。
でも、あの人がまさかな…
俺は両手で頬をで叩くと、バイクに跨った。
違う、人違いだ。
あの人である筈がない。
うん、違うよ…な…?
頭に浮かんだ無数の“?”マークをかき消すように、ハンドルを回してアクセルを蒸す。
バイト先のスタンドからアパートまでは、バイクで約20分。
コンビニのある交差点を曲がればもうアパートはもうすぐそこだ。
腹減ったし、早く帰って飯食いてぇ。
オレの思いに応えるように、腹の虫がグルルッと返事を返した。
その時、通りに出て再びバイクを走らせ始めた俺の前に、黒い人影のようなモノが飛び出して来た。
俺は咄嗟にブレーキをかけ、バイクを影にぶつかる寸での所で急停車する。
「…っぶねぇーなー! どこ見て…えっ?」
衝突の衝撃は感じなかった。
なのに…
「噓だろ…?」
バイクの前輪から数センチも離れていない場所に横たわる…人の姿。
あのホームレスだ…
エンジンを停め、バイクを飛び降りた。
「あ、あの…大丈夫…ですか?」
かける声が震える。
おまけに地面に張り付いた足は、ガタガタと震え、そこから動こうとはしない。
「あの…ちょっと…」
もう一度声をかけるけど、やっぱり反応は…ない。
マジかよ…
血の気が引く、ってこうゆうこと言うのかな?
目の前は暗くなるし、指先だって超冷たくなってるし…
『25歳アルバイト店員、バイクで跳ねてホームレス死亡』
俺の脳裏に新聞の見出しが浮かぶが、
いやいや、ありえねぇってば…
メットで若干重たくなった頭をブルンと振ると、頭に浮かんだ映像を掻き消した。
大体が飛びだして来たのは、この目の前でひっくり返ってるホームレスであって、跳ねてもない俺に過失は無い筈…
このままにしとくか…
そしたら誰か…
『25歳アルバイト店員、ホームレスを轢き死亡させた上に、逃走』
いやいや、それも違うからっ!
つか、このホームレスって、さっきコンビニで揉めてた人だよな?
俺の記憶の、遥か彼方に仕舞いこんだ、あの人の面影に良く似た人…
だあ〜っ、仕方ねぇ!
俺はピクリとも動かないホームレスを抱き抱えると、何とかバイクの後部に座らせ、自分もバイクに跨った。
振り落としてしまわないように、脱力した腕を引き寄せ、腰に巻き付けると荷造り用のビニール紐で括った。
「これでよし、と…」
落っこちんなよ…?
俺は再びバイクのエンジンを蒸した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます