第21話 浮気調査
Mさんは興信所の職員だ。わかりやすく言うと探偵業をしている。
その日、Mさんは、浮気調査の仕事をしていたそうだ。
依頼主は、某有名企業の重役の奥さんだったらしい。
旦那が浮気をしているという決定的な証拠が欲しいとの依頼だった。
「深夜の張り込みはきついから嫌なんですよね。寒いし、退屈だし」
Mさんは、ホテルの入り口が見えるところで、壁に寄りかかって、ずっとスマホをいじるふりをしていたそうだ。
小一時間経ったところで、ホテルの前にタクシーが止まった。
誰かの迎えなのかもしれない。
そう思って様子をうかがっていると、ホテルから人影が出てきた。
今回のターゲットだった。
浮気相手と思われる女が腕を絡めていた。
──決定的瞬間だな。
そう思って、Mさんは、気づかれないように、暗視機能がついたカメラを構えた。
今だ、とばかりにシャッターを押した瞬間、Mさんはそれに気が付いてゾッとした。
ターゲットとその浮気相手と思われる女性の後ろに、女が五人ついて歩いていた。全員、うなだれたように地面を見ながらぞろぞろと。
──ああ、これは生きている人間じゃない。
Mさんはそう直感したという。
「うわぁって、小さく声が出ちゃいましたよ」
仕事柄、怖いことにも慣れていると語るMさんだが、さすがにその時は震えあがったという。
ターゲットとその浮気相手がタクシーに乗り込んだ。
女たちもそのまま全員タクシーに入っていった。
「このぞろぞろとついてきてる奴らも写ってたらどうしようと思いましたがね」
幸いなことに、写真には、ターゲットと浮気相手だけしか写っていなかったそうだ。
「依頼主には、その時の写真を証拠として提出しましたけど、なんといいますか、他にも浮気相手がいるかもしれませんよ、って言おうかどうか悩みましたよ。……言いませんでしたけど」
Mさんはタバコに火をつけた。
「恨まれてるにせよ、慕われてるにせよ、モテすぎるのも考え物だなと思いました」
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