第33話

「さびぃ……」


真っ赤になった鼻をすすって、謙太郎がぼやいた。


寒い。ひたすらに寒い。寒いを通り越して、もはや痛い。

宿泊所に荷物を運び入れながら、土と混ざって汚い色になった雪を踏みしめる。持っている靴の大半がヒールである私も、流石に雪道仕様の滑り止めのついたブーツを履いている。


私の荷物は昨年の合宿とさほど変わりないが、ブーツだけは新調した。この合宿のためだけに出すには痛い出費であったが、昨年のような思いだけはゴメンだった。


「お、ハジメ!ここじゃね?」

「うっさい晃太。その話したら顔面タコ殴りにするから」

「怖ぇーよ!」


宿泊所の入り口、人の往来でグズグズに溶けた雪。防寒に重きを置いたブーツでそこを歩いた私は、見事にすっ転んだ。

死ぬほど恥ずかしかったし、猛烈に痛かった。大人になってから転ぶとダメージが大きいのだ。体重の軽い子どもとは被害の大きさが違う。


「つーかマジ寒いなー」


見事に吹雪いている。気温の低さもそうだが、ダウンの隙間から入り込んでくる冷たい風と、剥き出しの肌にビシビシ当たる雪が体温を容赦なく奪い去っていく。


「これ、今日は無理だな」

「だなー」

「予定、どうするんだろう」


宿泊の手続きに向かった先輩たちを見送って、ひとまず宿泊所に入る。あったかい。


懐かしい、石油ストーブの匂い。

すでに何人か、ストーブの周りに集まって暖をとっていた。


昨年も世話になったこの施設は、小中学生の林間学校や部活動の合宿所として利用される。個人での利用はできず、最低でも十名以上の団体利用に限る。


「いたいた!ケンくん!」


実家への帰省を後回しにしたらしいカナちゃんが、よたよたと走り寄ってきた。


このヨタヨタは可愛こぶっているわけではない。原因は足元。ムートンブーツだ。

ムートンはたしかに暖かいけれど、それは罠だ。ムートンは滑る。すごい滑る。


私は去年、それで尻餅をついた。


「わッ!」

「あっぶな。大丈夫?」


するん、といきかけたカナちゃんの腕をとって支えると、流石にヒヤッとしたのか珍しく私の腕にしがみついた。


「おーおー、イケメンですこと」

「黙れ死ね」

「暴言!」


暴言で晃太郎を殴りつけ、謙太郎にカナちゃんを引き渡す。今度は慎重に歩いていた。


「ハジメさん、ありがと」

「どーいたしまして」


そういえば聖はどこに行ったのか。


昨日、一昨日とクリスマスデートもどきを完遂して、また今日から二泊三日、スノボ合宿を共に過ごす。クリスマスデートもどきの相手が聖だということは、晃太郎たちには言っていない。

周囲を軽く見渡せば、聖はすぐに見つかった。なにが琴線に触れたのか、入り口の外にしゃがみ込んだまま写真を撮っている。


マフラーを引き上げて、再度、施設の外へ出た。死ぬほど寒いんですけど。


「……聖」

「あ、瑞ちゃん」

「なに撮ってるの」


おてもやんみたいに頬を赤く染めた聖が、つと指をさす。そこにあるのは汚い雪だけで、とくに物珍しいものもない。


「あしあと」


白いところなどほとんど残っていない雪、よく見ると無数の足跡が残っている。


「男の人の靴、女の子の靴、誰かが滑った跡。面白いでしょ?」

「そうなの?」

「そうなの」


隣にしゃがんで、足跡を眺めた。面白さはわからないし、とにかく寒い。


「写真、みせて」

「ん……はい」


赤くなった指先でカメラを操作して、小さな画面を向ける。


覗き込んだ液晶に映るのは、やはり汚い雪道。さまざまな足跡が、同じ方向に向かって進んでいく。


不思議だ。自分の目で見るだけでは、ただ汚いだけの雪なのに、聖の目を通して見ると人の営みに見える。そこに人は映っていないけれど、確かに"人"を感じた。


「寒い。聖、なか入ろう」

「うん」


手を差し出すと、迷うことなく聖は私の手を握った。



清水の舞台から飛び降りようとした聖を、私は引き止めた。ヘタレと罵りながら、聖の勇気をへし折った。

だけど、聖には私を好きでいてほしい。


ひどい我がままだ。


聖の手を引いて戻った私を見ても、太郎のふたりは何も言わなかった。若い女が手を繋いでいたところで、なんら不自然なことはない。

私たちの間で、恋だの性欲だの友情だのが絡まっていることは、はたから見ているだけではわからないのだ。


「吹雪でリフト動いてないらしい」

「あー、やっぱり?」


宿泊手続きを終えた先輩から聞いた話では、吹雪でリフトの稼働が休止。本日のスキーやスノボはお預けになった。


「ひとまず荷物まとめて、大広間に集合だってさ。たぶん酒飲むんじゃね?」

「ま、そうなるよなー。すげー買い込んだらしいし」


部屋割りは男女別。最大で一部屋に六人が泊まれるが、今回は余裕をもって三人ずつとなる。部屋それぞれに動物の名前がついており、私が割り振られたのは『リスさん』だった。


別れ際、謙太郎が小さな声でつぶやいた。カナのことよろしく、と。



三人で寝るには広すぎる、畳の部屋。荷物を置いたらダウンを脱ごうと思ったのだが、どう考えても寒すぎる。


「………暖房入れて良い?」


私の要望を受けたカナちゃんが、壁にかけられたエアコンのリモコンをいじった。ブゥンと小さな音がして、命綱が動き出す。


ハイパワーなガスストーブや灯油ストーブと違い、古いエアコンは暖まるまでに時間がかかる。


「ありがと」

「あたしも寒かったので」


会話が続かない。


私と、聖と、カナちゃん。謎すぎる部屋割り。いや、私と聖はわかる。部外者組だし、私を含む太郎たちの知り合い枠だ。


問題はカナちゃんである。


カナちゃんが組んでいるバンドのメンバーはギターとボーカルが女の子だったはず。三人ずつ割り振られているのなら、カナちゃんはその子たちと同じ部屋になっても良いだろう。


三人とも無言。全員、所在なく突っ立っていた。


私と聖だけであれば、なにもない部屋でさえ楽しく喋れただろうが、そこにカナちゃんを混ぜるのは失策すぎる。聖と話しが盛り上がってしまうと、必然的にカナちゃんは蚊帳の外になってしまう。だからといって、三人で楽しくお喋りするには、私たちの関係が微妙すぎた。


合宿所として利用されるこの施設は、宿やホテルと違い、備品というものがほとんどない。部屋にあるのは押入れに仕舞われた寝具一式のみで、机すらないのだ。せめて座布団のひとつくらい欲しかった。


「あー、だめだ、寒い」


無言もキツいし、何より寒すぎる。外は吹雪、この施設はオンボロ。


押入れを勢いよくあけて、敷布団をひっぱり出した。ひとつ、部屋の真ん中にぶん投げて、もうひとつ、またぶん投げる。最後のひとつを投げたところで、聖がそそくさとそれらを並べ始めた。


なんで笑い堪えてるの。


しかし、仕事はまだ終わっていない。今度は掛け布団を投げ、最後に枕を投げた。


「寒い!馬鹿みたいに寒いんだけど!」

「ぇ……ハジメさん、寝るの?」


「暖をとるの!」


聖が並べた布団のなかに、防寒具をなにひとつ取らないまま潜り込む。くそ、布団も冷たい。


「瑞ちゃん、寒がりだよねぇ……」

「寒がりとかもはや関係ないから。氷点下だよ、馬鹿でしょ」


「広間に集合って言われたじゃん」


呆れたように言われたが、そんなの知らない。あの人たちのお酒の飲み方、好きじゃないし。


布団の向こう側に話しかける。


「謙太に言っておいて。広間があったまったら行くって」


はぁ、とわざとらしいため息が聞こえて、布団がごそごそ動く音がふたつ。どうやら二人も、敷いた布団に座ったらしい。


私は寒くて震えている。


カナちゃんがいなければ聖で暖をとったのに。


「行けるわけないでしょ。あたしだけ行ったら、ひとりで追い出されたみたいになるじゃん」


「ふふ、えい!」

「ぎゃあ!冷たい!馬鹿!聖の馬鹿!」


する、と布団が少し捲られたと思いきや、冷たい手が私の頬に触れた。これが首筋だったらと思うと恐怖だ。


「カナ、ちゃん?もおいで、瑞ちゃんのほっぺあったかいよ」

「冷たい冷たい!こら!やめなさ、ぎゃあ!」


ほっぺ、と言いながらマフラーの中にまで強引に差し込んでくる。何事か!


聖の手と格闘していたら、バサっと布団が取り上げられた。


「ナイス、カナちゃん」

「ナイスじゃない!バッド!バッド!」


「あははは!」


驚いて、布団を取り返そうとした手が止まった。


カナちゃんの笑顔なんて、謙太郎に媚びている顔か、私に向けた性格の悪さが滲み出るそれしか見たことがなかった。


カナちゃんはいま、戯れている私と聖を見て、楽しそうに笑っている。


「えぇい!こなくそ!」

「うわ、ちょ、瑞ちゃん!」

「きゃあ!」


なけなしの腹筋を酷使して飛び上がると、ふたりをがしっと捕まえて布団の上に転がした。そのまま三人で布団に包まる。


全員コートやダウンを着たままで、ただでさえ狭い布団のなかが更に窮屈に感じる。たくさんの布に阻まれ、人肌の暖かさにありつけない。


「ちょっと、ハジメさん!」

「悪戯した罰!」

「アハハハ!くすぐった、アハハ!アハハハ!」


コートとセーターのなかに手を突っ込んで、カナちゃんをくすぐってやった。


「のわ!聖!」

「瑞ちゃんはひとりで布団に籠城した罰ね」

「なんで聖の手そんなに冷たいの!死人なの!?」


生きてるよ!というツッコミに、カナちゃんと揃って笑う。


「はぁー、もう勘弁して……」

「あっつ……」

「瑞ちゃん、暴れたもんね」


三人で散々戯れあって、一息ついたときには部屋も暖まっていた。

カナちゃんにいたっては額に汗まで浮かんでいる。そりゃ、あれだけくすぐられたら汗もかくだろう。途中からは聖までカナちゃんをくすぐっていた。


ようやく上着を脱いで、ぐちゃぐちゃになった布団に座り込む。


「ごめんなさい、ハジメさん」

「ん?布団とりあげたこと?」


「じゃなくて。本当はあたし、別の部屋だったの」


乱れた髪を直しつつ、カナちゃんの視線が畳の上に落とされた。


「あぁ、それね。バンドの子と一緒じゃないんだなーとは思ったけど」

「嫌われてるんで、あたし」


ぽつんと落とされた言葉。


一部のサークルメンバーから疎まれているという話は、晃太郎から聞いている。


「ふぅん」

「ふぅんって……」


いや、興味ないし。


カナちゃんがバンドのメンバーと仲違いしようと、謙太郎とギクシャクしようと、私に害がないなら構わない。


同室になっても、先ほどみたいに楽しく笑い合えるなら、私はそれでいい。


「ハジメさんもあたしのこと嫌いでしょ」

「いや、べつに」


「は?」


は?って。そんな得体の知れない生き物を見るみたいな目をされても困る。


私はカナちゃんのことを何も知らないのだ。謙太郎の彼女で、嫉妬深くて、レディコミに出てくるヤバい女みたいな言動をすることしか知らない。


晃太郎がカナちゃんと呼ぶから私もそう呼んでいるだけであって、その実、本名すらわかっていないのだから。


「だってあたし、ハジメさんに嫌がらせしたし」

「無意味な敵意だとは思ってたけど。そもそも私、カナちゃんのことを嫌いってハッキリ言うほど貴女のこと知らないから」


「無意味」


そう、無意味だ。


愛しい彼氏のそばに侍る鬱陶しい女扱いをされてきたけれど、私は謙太郎の彼女になりたいわけでも、謙太郎に恋をしているわけでも、謙太郎を独占したいわけでもない。

私はあいつにとってただの女友達であり、あいつは私にとってただの男友達だ。それ以上でも、それ以下でもない。


いくらカナちゃんに敵意や嫉妬の炎をぶつけられても、私が謙太郎に向ける情が友情でしかない限り、それはまったくもって無意味なものでしかなかった。


だから鬱陶しかったし、だから面倒だった。


「だってあたし、ハジメさんからケンくんのこと奪ったのに……」

「いや、あのね、奪われたつもりもなければ、奪うつもりもないから」


「だって」


なんとなく、カナちゃんの手を握る。私と同じ、小さい手。ネイルもしていなければ、甘皮の処理もされていない。


キーボードを弾く指は、細くて長い。


「だってもなにもないよ。私は謙太のこと好きじゃないし、好きにもならない。奪うとか奪われるとか、そういう表現がお門違いなの。お分かり?」


「お、お分かりって……」


なにも言わず黙ったままの聖を伺うと、またあの慈愛を浮かべていた。あぁ、お尻の下がもぞもぞする。


私はカナちゃんに興味がないのだ。カナちゃんと仲良くなろうと思ったこともなければ、カナちゃんのことをより詳しく知ろうとも思わない。


私と、謙太郎と、晃太郎と、カナちゃん。友人関係を潤滑にするためには、私とカナちゃんが仲良くなって、男二人と女ひとりの三人組から異性二人ずつの四人組になることが最良だと分かっていた。


だけど、それをしようとしなかったのは、私も同じこと。カナちゃんは私への敵意を隠さず、私はカナちゃんへの無関心を貫いた。

返事も挨拶もないから、私も彼女を無視した。


黙ってしまったカナちゃんが何を考えているのか、私には想像することもできない。


「不安で……」

「不安」


「ハジメさん綺麗だから……ケンくん、みんなと仲良いし……ハジメさんはケンくんといつも一緒だし……ケンくんと晃太くんしか、一緒にいないし……」


謙太郎や晃太郎としかいないわけではなく、謙太郎と晃太郎しか、仲の良い友人がいないだけである。サークルに所属しない私は、交友関係を広げる場が少ない。


「あの二人、サークルで『彼氏一号、二号』って呼ばれてるの」

「ぶっは!あはははは!彼氏一号二号、あはははは!仮面ライダーかよ!あはははは!」


「笑い事じゃない!あたしなんてみんなからケンくんの愛人扱いされてるのに!だから!だから、ケンくんの彼女はあたしだって……」


だから私を謙太郎の傍から蹴落としたかった。


彼氏に付き纏っている女だから、ではなく、周囲から彼女扱いされている女だから。

彼氏をとられる不安よりも、周囲の不躾な声こそがカナちゃんの自尊心を傷つけたのかもしれない。


手を握ったのも、貴女の彼氏をとったりしない、と懇切丁寧に口にしたのも、それによって私の周囲が平和になればいいと思ったから。

最初からカナちゃんに歩み寄る気があれば、カナちゃんがどうしてここまで私に敵意を剥き出したのか、もっと早く知れたのかもしれない。


私に対する悋気だけであれば、サークル内で疎まれることもなかったのだろう。

カナちゃんが敵意を向けた先は私だけでなく、謙太郎たちを私の彼氏扱いした周囲の声にも向いていた。その元凶である私への敵意が突き抜けただけ。


まぁ、どちらにしても、私が謙太郎たちとつるんでいる限り、解決できない話しだったのかもしれない。


「あたし、どうすれば良かったんだろ」

「さぁ?」

「さぁ?ってさぁ……ハジメさん、あたしに興味なさすぎない?結構勇気出してこの話題出したんですけど」


そんなことを言われても。


私が謙太郎たちとつるんでいるかぎり、現状はきっと良くならない。

だからと言っていまさら彼らと離れたところで、軽音サークルのノリでは『元カレ一号二号』なんて言われるだけだ。そういう人たちだもの。


「んー、じゃあ、そのいかにも『面倒な女』をやめたら?」

「んぐふッ」

「ちょっと聖」


笑うな!


「あたしやっぱり面倒くさい?」

「面倒くさいでしょ。彼氏の女友達に威嚇して、その周りにも威嚇して、挙句、彼女のくせに彼氏にベタベタ媚び売って」

「媚び……」


あの態度が媚びでなくてなんというのか。


「カナちゃんは謙太のカノジョでしょ。堂々としなよ。私、彼氏の女友達に嫉妬したことないからよくわかんないけど」

「うわぁ……」


「なに聖」


ナンデモナイデス、と目を逸らした聖をじっと見つめる。うわぁってなによ、うわぁって。


「ハジメさん、モテそうだもんね」

「美人だからと言ってモテるわけじゃないんだな、これが」

「うわ、自分で言う?」


何度も言うが、私が美人なのは客観的な事実である。


「言っとくけど、ハジメさん超モテるからね。高嶺の花っぽく見せかけて男の人とフランクに話すし、そういう女が一番強いんだから」

「ラブレターもらったこともなければ、校舎裏に呼び出されて告白されたこともないよ」


「漫画か!そんなファンタジーあってたまるか!」


そんな怒られても……


「で、あたしどうしたらいいんですかね!?」

「いや、知らんし……えー、まずはその甘ったるい香水やめたら?」

「えっ」


カナちゃんが自分のセーターを引っ張ってくんくん嗅いだ。伸びるよ。


「香水つけすぎだなって思ってたから」

「く、くさい?」

「うん」


まぁ、うん。くさいって言われたらショックなのはわかる。わかるが、誰かが言わないと、一生くさいままだ。


「カナちゃん、どこにつけてる?」

「えと、耳のうしろとか……あと、肘あたり……と、内腿」

「どれくらい?」


ひとふき、と小さく言った。

うん、つけすぎだ。どう考えても。


「聖、どこにつけてる?」

「え、わわわ私!?ええええと、こ、腰のあたり、かな。体温高いから、私」

「私、胸」


胸!と聖が大きな声を出した。胸元につけると香りが強く漂うので好きなのだ。あと、上着を脱いだ時に良い匂いがして、気分がいい。


カナちゃんが普段使いにしているらしいものを見せてもらう。ピンク色の可愛い小瓶。


「えと、カナちゃん。もしかしてコレ、しょっちゅう付け直してる?」


問うた聖に、ショックが大きいらしいカナちゃんが小さく頷いた。


「これね、なんだっけ、パルファム?えとね、あんまり付け直すものじゃないんだよ、これ」

「そうなんだ」

「耳の後ろにつけるなら、一滴とか二滴とか、それくらい。ちょっと出して……こんな感じに」


オーデコロンであれば、こまめに付け直す必要がある。けれど、カナちゃんの使っている香水は香りが長く持続するもので、一日に何度も付け直す必要がない。


「あの、ハジメさん、ショウさん」

「ん?」


「あたしにメイクを教えてください!」


布団の上でガバッと頭を下げたカナちゃんの姿勢は、いわゆる土下座と呼ばれるソレだった。



メイク道具はあれを使っている、この前試したこれが良かった、服はどこで買っている、ここの下着が可愛い。

ぐちゃぐちゃにされた布団の上で、女三人、そんな話しをした。


いつまで経っても大広間に来ない私たちを呼びに来た謙太郎が、爆笑している私たちを見て驚いていた。

なんの話題でそんなに笑っていたのかは、忘れてしまったけれど。

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