ex 参戦
「下手に動くな。ひとまずコイツらは俺が倒す」
アイリスに向けてそう言って、全神経を集中させる。
(さて……俺が倒すとはいったものの、正直しんどいな)
二人を連れて逃げるのは諸々の状況を考えると正直厳しい。
両手は塞がる動きは鈍る。
かえって二人を危険に晒す事になりかねない。
故に……此処は戦ってどうにかするしかない。
「……」
此処までユーリとアイリスが無事だったのは、本当に奇跡のような確率だった。
まずユーリの方。
これはロイドがうまくやったのだろうが……それにしてもある程度の運も絡んでいたのだと思う。
例え下っ端だったとしても、プロを名乗れるだけの実力はある連中だから。
学生相手に真正面からぶつかれば本来九割方向うが勝つ。
そしてこちらもそうだ。
運が良かった。
向こうがアイリスを殺しに来たにも関わらず、その行為を躊躇っていた。
それ故にまだ生きている。
だがブルーノが魔術を打ち込む直前に殺しにかかった時点で、その覚悟は決まったものと思われる。
現に未だに戦意はそこにある。
……だとすれば、かなり厳しい戦いだ。
(俺一人で相手に出来るキャパ超えてんぞこれ)
コイツらはただ殺す覚悟が足りなかっただけ。
魔術も碌に使えない学生一人を殺す為の戦力としては過剰すぎる程の力を。
先の当てるつもりで撃った攻撃を躱せるだけの実力がある。
そんな奴らを三人同時。
それどころか、できるなら一対一で戦いたいような相手だ。
そういう強者三人を、後ろを守りながら戦わなければならない。
(いや、マジで他力本願になるけど、ユーリ目ぇ覚ましてくれねえかなぁ)
ユーリが目を覚ましさえすれば、アイリスを連れてこの場から逃げろと言える。
まだ自分が負わせた怪我は完治していないが、それでもユーリならそれができると思う。
もしくは逃げずとも、アイリスを守ってもらうか。
とにかく……ユーリが目を覚ますだけで、かなり状況が好転する。
(いやほんとマジで頼むって)
だが現状、まだ眠っているのだろう。
いつ起きるかなんてのは分からない。
やり過ぎた。全部自分が悪い。
そもそもこんな所に呼び出したのは自分で、敵も身内だ。
……あまりに自分に落ち度があり過ぎる。
だったら。
(なんとか……するしかねえよなぁ)
なんとか三人……いや、まだ居るかもしれない敵も含めて全員倒すか、ユーリが目を覚ますまで時間を稼ぐか。
どちらにしても気合を入れるしかない。
そう思い術式を構築していると……こちらに第三者が飛んでくるのが見えた。
僥倖。
(アイツ……マジか。飛べんのかよ。すげえな)
微かに音が聞こえた方に視線を向けると、そこには風を操り空を飛ぶロイドの姿があった。
そして場が互いに牽制しあい硬直している間に、ユーリ達の元へと降り立つ。
(……とにかく、これで状況が若干好転した)
単純に、動ける味方が増えた。
……そしてこの構図だ。
こちらの思惑などは見えなくても、それでもこの状況においては味方だという事は理解してくれるだろう。
だから背中から刺されるような事は無い筈だ。
そして読み通り、攻撃は来ない。
ある程度状況を理解してくれている。
……これで、少しでも前へと意識を割く事ができるようになった。
「お前の弟とその子の事、お前に任せる!」
ロイドに向けてそう叫んで、そして地を蹴った。
後ろを守る者が現れても、なお分が悪い戦いに臨む為に。
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