ex 勃発 下
「は……え……?」
突然の出来事で思考が回らない。
今、自分の目の前で、誰が、どうして倒れているのか。
それは分からないけれど。
「ユーリ!」
慌てて駆け寄る。
「お、弟君っすか!?」
「な、なんでこんな所に……というか怪我……ッ!」
後ろを歩いていた二人も遅れて状況を理解したようだった。
最も目の前で起きている事が分かっただけで、三人共何がどうなってこうなったのかという事は分からないのだが。
(ちょっと待て、そもそも何でユーリが此処に居る。いや、何でここにいたかはこの際どうでも良い)
ロイドはユーリが飛ばされてきた方に視線を向ける。
(多分誰かにやられたって事だよな……?)
誰かに、何かしらの攻撃を打ち込まれ、意識を失い此処に倒れている。
即ち……ユーリに敵意を持って攻撃した誰かが此処に居る。
そう判断してからは、動きが早かった。
「ミカ! 頼むユーリに回復魔術を! まっちゃんは二人を守れ!」
「た、大将は!?」
「多分誰かが此処に来る……ソイツを迎え撃つ!」
言った瞬間だった。
「……ッ!?」
ユーリが飛ばされてきた方角とは別方向から、明らかに何かしらの魔術が付与されたナイフが飛んできた。
ユーリ目掛けて。
「まっちゃん!」
「分かってるっす!」
その声を聞いた瞬間、ナイフユーリ達の方への意識は外した。
まっちゃんが分かってると言った。
だったらうまくやってくれる。
そこに信頼は置いている。
だったら自分がやるべき事は一つ。
(誰だか知らんがぶっ飛ばす!)
敵を倒して弟と友達を守る。
その為にスキルとそして、風を操る魔術を発動させた。
そして風の流れから周囲の人間の位置情報を瞬時に割り出す。
(……ナイフ飛んできた方向に二人。後はゆっくり目に一人こっちに移動してきてる。三人か……やれるか?)
自分には魔術の才能があると自負している。
それでも自分はまだ一介の学生だ。
もし向うが戦闘のプロだった場合……果たしてどこまでやれるか。
(いや、弱気になるな……やるんだよ!)
ナイフを投げてきた方角に居る連中の中心に、遠隔で竜巻を作り出す。
……だが、こちらに接近してくる形でそれを回避される。
(……ま、そう簡単にはいかないよな)
発動から有効打になる大きさに育つまでに数秒。
狭い屋内でもなければ、その数秒の間に回避する事位容易。
だからそれは本命じゃない。
狙いは……こちらの任意のタイミングで、向こうの連中を前へと炙り出す事。
そして。
(……来やがったな)
二名が木々の間から前へと出てくる。
(すげえ、見るからにヤバイ奴らですよって感じの格好してやがるな)
白装束の顔を隠した二人組が。
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