20 戦いの才能 下
「う、運動神経……ですか」
魔術で戦う力を競う大会の対策考えてるのに、全く魔術の技能が関係してない話が出てきて若干狼狽える。
だけど何もおかしい事は言っていないという風に、ブルーノ先生は続ける。
「近づいて殴るにしても、敵の攻撃回避するにしても、運動神経は大きく動きに反映される。それに……なにより新しい動きを覚える時も、運動神経は高ければ高い程習得スピードは早くなる。だから実践するにも習得するにも、魔術師にとって意外に重要になってくる才能だ。お前は中々とんでもねえ才能持ってたんだよ」
「そう……ですか……」
自分が欲しかった物とは違うけど。
まあそう言われて悪い気はしないな。
「まあ純粋な魔術師としての評価には繋がりにくいけどな。だけどお前が進みたいような進路じゃ重宝されるような大事な才能だぜソイツは……ちなみに自分が運動神経抜群っていう自覚はあったか?」
「え、いや……特別そんな風には思ってませんでしたけど。基本殆ど魔術とばっか向き合ってきたんで」
言われて初めて自覚した。
大体普通位だと思ってたから……俺って運動神経良かったんだ。
「勿体ねぇ! 宝の持ち腐れじゃねえか! お前魔術に拘らずスポーツとかやってたらいい線行けた感じじゃねえの?」
「た、確かに……やってなくて良かったぁ……」
「え、それどういう意味?」
まあそれは知らんけど。
いや、でもスポーツか。
「ああ、でも此処来る前の友人と、マジでたまにやる趣味程度にバスケやってましたけど、あんまうまくなかったですよ俺」
殆どの殆どじゃない部分。
家に居ると頭がおかしくなりそうな時が結構頻繁に会って、そういう俺を支えてくれた俺の友人達。
そいつらと偶に遊び程度でバスケをやってたから、特別うまくは無かったよ。
「ほら、ダンクシュートってあるじゃないですか。あれボールをゴールの所に直接持ってくだけなのに偶にミスるんですよ」
「「えぇ……」」
なんか二人して呆れるような声を向けられる。
何故に?
「ユーリ君……キミ、意外と天然な所あるんだね」
「いや、どういう事?」
「お前、多分だけどそっちの道進んでたら普通にそれで飯食ってけたんじゃねえのか? 他のプレー見てねえから知らねえけど」
「えぇ……ま、マジ!?」
流石に驚き過ぎて敬語完全に剥がれた。
だってほら、アイツらなんも言わなかったじゃん。
なんか当たり前にハイタッチしてきただけじゃん!
まさか俺、知らない内に無茶苦茶レベル高い集団とバスケやってた!?
……まあ、だとしても。
「まあ……別に俺そういう方向で飯食っていきてえって思った事は無いんで。どうであれ結局やる事は変わってないんだと思います」
結局俺の周りにはまともに扱えもしない魔術で溢れていて。
否定したい経緯ではあるけれど、将来やりたいような事がぼんやりと浮かんできていて。
それになる為に。
あと……それはそれとして、きっと魔術師として評価されたいという承認欲求に駆られて。
結局この道に進んだ筈だ。
「……そうか。まあたらればの話はどうでも良いわな。今はお前が進んでいる道の話をしよう」
そう言って一拍空けて話を仕切り直してからブルーノ先生は言う。
「で、大分話逸れちまったが、お前には高い運動神経がある。それも俺の想像以上だ。その才能を見込んで予選までに叩き込めるだけの戦闘技能を叩き込む。多分お前ならスポンジみたいに吸収してくれるって思ってるからよ」
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