10 光と影 Ⅱ
「なんでそう思う?」
ブルーノ先生の問いに俺は答える。
「アイリスは俺に、俺の劣化コピーの力が今まで頑張ってきた証だ、みたいな事を言ってくれました。だから俺も凄いんだって。それ聞いて前向きな気持ちになる事は出来たんです」
だけど、気が付けば大分沈んでいた声で言う。
「でもやっぱりふとした時に俺は別に凄くなんてないって考えが、メッキが剥がれるみたいに浮かんでくるんですよ。そういうのもあってあんまり楽観的に物事考えていけねえなって」
だから落ち着いて、一呼吸置いて、浮かんでくる当たり前の現実を口にする。
「今日集まってる教師達も物珍しくて見に来てる生徒連中も……誰も俺の事なんて見てねえでしょ。俺はただの出力装置って感じで。だから……まあ、アイリス以外の誰かが認めてくれるビジョンがどうしたって見えないんです」
「……そうか」
俺の本音を聞いた後、そう呟いたブルーノ先生は一拍空けてから言う。
「……お前結構面倒臭ぇな!?」
「直球過ぎません!?」
思ったよりストレートに感想飛んできてビックリしたよ俺。
「遠まわしに言って伝わんねえのも良くないだろ。特にお前みたいに複雑に考える奴の場合はな。遠まわしに言った事曲解されたらたまったもんじゃねえだろ」
「まあ、確かに」
そう言って苦笑いする俺に、静かで真面目な声音でブルーノ先生は言う。
「まあ……言いにくいがお前の言う通りだよ。少なくとも教師連中の興味は100パーセントアイリスの術式だ。お前の事は未知の術式を形に変える出力装置としかみていない。その力を凄い力とも、それを振るうお前が凄いとも、誰も思っていない」
「……」
「この前の追試。アイリスが通った理由はお前がアイリスの論文の価値を示したからだ。だけど……まあ、分かってはいると思うが……お前の場合は順当に試験を突破したからだな。それ以上の評価は特にされていない」
「……マジでストレートに言うんすね」
「嫌か?」
「いや……それで良いですよ。遠まわしに言われても別に言われてる内容自体は変わんねえ訳だし」
それに。
「それに先生の場合は悪意が感じられないんで」
「それは……何かを教える立場にとってはかなりの誉め言葉だな。まさかこんなキツい事言ってそんな言葉が返ってくるとは思わなかったよ」
「そりゃ……今まで散々碌でもない奴に碌でもない事言われてきましたんで。その辺の判断基準緩いですよ俺」
「そいつは助かるな。色々とやりやすい」
そう言って笑みを浮かべたブルーノ先生は言う。
「そんなお前に一つアドバイスをくれてやろう。今後お前が頑張っていく為にすげー大事な事を言うからよく聞いとけよ」
「え、あ、はい」
そして真剣な声音でブルーノ先生は言う。
「すげえ魔術師になろうと思うな。魔術師としての評価なんて平々凡々でも良いんだよお前の場合」
「……へ?」
そんな、魔術学園の教師の発言とは思えない事を。
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