7 重い空気、それでも
俺達は普段通り、端の方の席に陣取る。
そんな風にいつもと変わらない事をやる訳だけど、その日教室内で変わらなかったのはそういう事位。
一日中、クラス内の空気は重かった。
……だけど居心地の悪さは感じない。
寧ろ俺達にとっては良い感じだとすら思える。
元々が最悪な居心地の空間だった訳で、今は実害みたいなものも無い事を考えればそれだけで俺達にとってはプラスだし、そもそも重い空気を出しているのもそれで実害被ってるのも俺達じゃなくクラスメイトの連中だ。
……あまり性格の良い発言じゃないかもしれないけど、まあ悪くは無いだろう。
そしてこの空間で最も不機嫌そうな感じだったのがハゲだ。
まあこれも当然と言えば当然だろう。
ハゲにとって俺達は此処に居てほしくない生徒だろうから。
そして自分の鼻を圧し折ったような相手だろうから。
そりゃ機嫌の一つや二つ悪くなるだろ。
それでならないような奴だったら、今までみたいな言動はきっと無い。
まあそんな訳で、無事迎えられた今日の学園生活は平和そのものだった。
実技の授業も無かったしな。
……いや、ほんと、昨日の今日でそれが無かったのだけはありがたい。
アイリスは俺の事を凄いと言ってくれた。
俺もそう思うようにする事にした。
だけど結局アイリスの術式が無きゃ駄目という現実が変わっている訳でもなくて、この前の追試のように何でもありな感じじゃなくて、習ったことを実践するタイプの授業に出れば相変わらず俺は劣等生だ。
別に恥をかく事には慣れているけど……いいだろ、もうちょっと位は今の空気のままでもとは思う。
まあそうやって弱みを見せて、もしかしたら再度マウントを取ってくるような事になっても。
……今度はもう負けない。
アイリスが凄いと言ってくれた自分を、堂々と見せていけば良い。
……とにかく、この日は平和な一日だった。
授業を受け、アイリスと一緒に昼食を取り、雑談を交わして、それからまた授業を受ける。
そんな平和で楽しい一日。
そして特別大きな問題が起きないまま、放課後になる。
……何かあるとすれば此処から。
「本当に呼び出されたね」
「ブルーノ先生の読み通りだったな」
放課後、俺達は教師達から呼び出され、この前の追試会場へと向かっていた。
要件は朝ブルーノ先生が言ってたように、アイリスの術式を見たいからという感じだろう。
「この前まで誰も信用してくれなかったのに皆して見たいとか、すげえ出世じゃんアイリス」
「だろう? 大出世だよ大出世」
ちょっとドヤ顔でそう言った後、アイリスは言う。
「ユーリ君のおかげでね」
そうやって俺も一緒に持ち上げてくれる。
「どういたしまして」
言いながら心を落ち着かせる。
……頑張らないとな。
アイリスの術式を出力するのは俺だ。
俺の友達が凄いって事を、これから大勢の先生方にも証明してやる。
その目に焼き付かせるんだ。
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