5 あの後の話 下
「なんとなくそうじゃないかって思ってたんですけど……やっぱり誰もアイリスの論文を理解できなかったんですね」
「やっぱりっておいおい。颯爽と助けに入った俺の事、もうちょっと期待してくれても良かったんじゃねえの? ……いや、まあ俺にもさっぱりだった訳だが。マジでなんだアレ。既存の理論がまるで掠りもしてねえぞ」
そう言ってブルーノ先生は軽くため息を吐く。
「そんな訳でこれからも無事学園生活を送れる事になったお前らだけど……多分これからしばらくお前らは特別慌ただしいぞ」
そう言って一拍空けてからブルーノ先生は言う。
「あの日あの場に居なかった教職員達も、あの論文を形にした物を見たがってる。とにかく今日にもどこかで呼び出しが掛かると思うから、そうなったらその一件だ。分かったか?」
「あ、はい大丈夫です」
「えーっと、ボクが直接使う訳じゃないんですけど、ボクも行っていい感じなんですか?」
「術式の考案者が呼ばれない訳無いだろ。とにかくそういう事だから……その時はお二人で派手にぶちかませばいい。分かったか?」
「「はい!」」
俺達二人は自然と強く返事をする。
……本当に急速に風向きが変わった。
今まで誰からも評価されてこなかったのに……あのハゲだけじゃない。
多くの大人に認めて貰えるようなチャンスが目の前にある。
少し前では考えられない事だ。
「ま、皆各々忙しいし、お前らも通常の授業がある。呼び出しは放課後になると思うんだけど、もしかして予定とかあったか? 例えばデートとかさ」
「「いやだからそういうのじゃないです!」」
「うんうん、毎回息ピッタリだ……で、実際予定とか無かったのか? あるならその辺配慮するように話回してみるけど」
「あ、はい。特にはないですけど」
「そうだね。今日は買い物とか行く必要も無いし」
「そういえばカレー仕込んでるんだっけ?」
「今回はいつもと隠し味を変えてみたから。ちょっと期待しても良いよ」
「うわ、マジか。楽しみ」
「お前らマジで付き合ってないの?」
「と、友達です」
「だよね、うん、友達」
言いながら自然と目が合って、すぐに反らした。
……相変わらず顔赤いなアイリス。
……いやいや、あんまり変な事を考えるな。
いやほんとマジで変な期待はすんな。
アイリスに嫌われるような事とかあったら、俺結構本気で死にたくなるかもしれない。
「……凄い良い感じの青春だ」
まあそれは否定しない。
色々あって辛い事だらけではあっても、悪くないよほんと。
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