4 あの後の話 上

 聞きたいことが山のようにあった。


 今まで色々と話している時点で大丈夫だったのだろうと思うけど、そもそも俺達は無事に追試を突破出来ていたのかという話。


 そして仮にも来たばかりのブルーノ先生がそれなりにこの学園での立場もあるだろうハゲに突っかかって何の問題も起きていなかったのかという心配。


 そして色々と大変な事になってたけど、ハゲはあの後どうなったのかみたいな話とか、まあとにかく色々。


 その色々の中で、俺達が一番聞きたかった話を最初にしてくれる。


「ああ、そう言えば言っとかないと駄目だったな。二人共追試は合格。紆余曲折は無茶苦茶あったけどちゃんとお前ら二人の大勝利だよ」


「っしゃあ!」


「やった!」


 そんな朗報を聞いて俺達は思わず自然にハイタッチをする。

 いや、そうなってるって思ってたけど。

 そのつもりで今の今までいたんだけど、それでもはっきりとした言葉で言われるとすげえ嬉しい!


「やっぱ息ピッタリじゃねえか。人前であんまりイチャつくなよ」


 改めてニタニタとしたとした笑みを浮かべるブルーノ先生。


「「いや、だからそういう訳じゃ――」」


「はいはい分かってる分かってる。末永くお幸せに」


「「いや何も分かってない!」」


 ……うん、ほんと、そういう関係じゃねえから俺達。

 うん……まあ、違うし……いや、全然悪い気はしないんだけども俺は。俺はね?

 ……だめだ、考えてると恥ずかしくなってくる。

 は、早く話進めよう。

 と、そう考えていた所でタイミングよくブルーノ先生は言う。


「……で、まあお前らはそんな風に大勝利だった訳だけど……他、この前の事で聞きたい事とかあるか?」


「じゃあ――」


 俺は色々と恥ずかしいのを誤魔化す為にもブルーノ先生に聞く。


「あの後、ブルーノ先生は大丈夫でした?」


「俺? 俺は問題ねえよ。問題無かったからこうして出勤してる。俺は俺で大勝利よ」


 そういってブルーノ先生はピースサインを向けてくる。

 ……まあ俺らの肩を持ってくれて、俺達が無事追試を合格できたって事を考えるとつまり大丈夫って事になる訳か。

 俺達が駄目なら肩を持ってくれた先生の立場もあまりよくない。

 気が付けばこの三人でちょっとした運命共同体みたいな感じになってた訳だ。

 いやほんと……色々とうまくいって良かった。


「で、俺達が合格したって事はあのハゲ、自分の非を認めたって事ですか?」


「渋々だけどな。で、渋々認めた結果アイリスの論文が正しかった事が広まって、ハゲを中心に色々な先生が恥をかいた。正直な話をすると今教職員は主にアイリスの論文を中心に色々と無茶苦茶な事になってる」


「無茶苦茶って……」


「ハゲの事だけ聞こうと思ったのに、えらくスケールが大きな事になってるじゃねえか……」


「それだけ今まで落書き扱いされてきた論文が、価値のある物だったって事だよ」


 ただ、とブルーノ先生は言う。


「結局誰もその内容を理解する事が出来なかった訳だけどな……俺を含めて」

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