二章 誇れる自分である為に
1 前向きな一日の始まり
いつも学園へと向かう足取りは重かった。
辛い事しか無かった。辛い事しか無かった。
必死でしがみ付いていた場所の筈なのに、碌な感情が湧いてこなかった。
だけど今日は違う。
「なんか清々しいね」
「だな。足取りが軽いわ」
学園へと向かう足取りがとても軽い。
前向きな気持ちで歩みを進められる。
それもこれも、アイリスと勝ち取った結果だ。
俺達は勝ったんだ。
そんな前向きな気持ちで、俺達は雑談を交わしながら学園へと向かう。
道中他の生徒の姿を見る事は殆どない。
基本的に少数だからな。学園の外に部屋を借りてる奴なんて。
だから俺達はどんな反応をしてくるか分からないクラスメイトよりも先に。
「よ、お二人さん」
学園の校門の前で、俺達の勝利に大きく貢献してくれた人物と出会う事となった。
「あ、ブルーノ先生……で良かったですよね?」
「お、覚えていてくれたのか少年」
「そりゃまあ……とにかく世話になったんで」
そうだ、改めて言っとかないとな。
「この前はありがとうございました。おかげでマジで助かりました」
「ボクからも……ありがとうございます!」
俺達二人で一緒になって頭を下げる。
俺達は勝った。
アイリスの積み上げてきた物を形にして、俺達は勝つことができた。
だけど勝ち取った勝利を形として残してくれたのは他ならないブルーノ先生だ。
この人があの場に都合よく表れてくれなかったら、俺達はそこまでだったかもしれない。
あの場で他に助けてくれそうな誰かなんている訳が無いんだから。
「頭上げろよ。前にも言ってたが、俺は大人として当然の事をやっただけなんだよ。だから気にすんな」
そう言って笑みを浮かべた後、思い出したように言う。
「そういえば少年とは一応顔を合わせたが、まともな自己紹介みてえな事はしてねえんだよな」
そしてブルーノ先生は視線をアイリスへと向ける。
「そしてお前とは一応初めましてになる訳だ」
「そうですね。ボク観客席に居たし」
「じゃあ改めて。俺はブルーノ・アルバーニ。よろしく」
改めてブルーノ先生が自己紹介をしてきたので、俺達も自己紹介をしておく。
「ユーリ・レイザークです。よろしくお願いします」
「アイリス・エルマータです。よろしくお願いします」
「成程成程。ユーリにアイリスね。まあ聞かなくても知ってたけど……それでも面と向かった自己紹介って奴は大事だよ、うん」
そう言って頷くブルーノ先生に尋ねる。
「ところでえーっと……此処で何してたんですか?」
「この先校舎まで結構ありますし、もしかして迷いました? ボク達で良ければ案内しますよ?」
「いや流石にこの時点で迷ってたら、あの時俺あそこに居なかったろ」
苦笑いを浮かべてそう言った後、ブルーノ先生は言う。
「お前達を待ってたんだ。改めて少し話がしたいと思ってな」
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