17 祝勝会

「で、どうする? どっか良い感じの所に飯でも食いに行く?」


「いいね。でも料理作るだけ作って部屋でゆっくり祝勝会ってのも良くないかい?」


「確かに。外で飯食ってて顔会わせたくねえ連中と鉢合わせたりしたりしてもやだしな……これ部屋でやった方が良いか」


 競技場を後にしながら、今日これからの事を二人で話していく。

 とりあえずは主に祝勝会の話だ。


「じゃあそれでいこうか」


「あ、でもちょっと待ってくれ。俺料理できねえから手伝える事以外基本アイリスに任せる感じになるんだけど、なんつーか、祝勝会なのにお前大変じゃねえ?」


「いや、ボク趣味料理だし大丈夫……なんて事言ってもキミは気にするだろうしね。よし、買い物したら荷物は八割程持ってくれ」


「全部じゃなくて良いのかよ」


「料理の方、少し手伝ってくれるんだろう? これで良い感じにバランス取れるじゃないか」


「なるほど、天才じゃん」


「天才だろう?」


 そう言ってアイリスは少しドヤって胸を張る。


 まあ結局そうして決められたバランスの取れた役割分担は、いざその後時間を潰してから買い物に行った時、自然な流れで俺が全部荷物持ってた辺りで崩壊したし、その後の調理もそもそも手伝う隙が無かったりしてた訳で、完全に無駄になった訳だけど。


 ……まあ、バランスは取れてた訳で。

 まあそんな風にこれからも持ちつ持たれつ行こうと思う。



    ◇




「……お前ほんと何やらせても天才だよな。マジで店開けるんだってお前の料理」


「あはは、ご満足頂けたなら頑張って作って良かったよ」


 そして夜。

 そこそこ奮発して買った良い食材を使ったアイリスの料理をワイワイと談笑しながらおいしく頂く。

 ……本当に楽しい時間だ。

 昨日の通夜のような雰囲気が嘘みたいだ。

 まさか今日もこうして楽しくアイリスと同じ時間を過ごせるなんて思わなかったよ。

 自分で祝勝会を提案してたのにさ。


 そしてアイリスは言う。


「……まあもし今日が駄目だったら、将来的にそういう事もやってたかもしれないね」


「……もしそうなってたら俺はその店間違いなく通ってたよ」


「あはは、ありがとう。でもそうはならなかった。だから当分はボクのお客さんはユーリ君だけだね」


 だから、とアイリスは言う。


「改めてよろしく」


「こちらこそ」


 そう言って俺達は笑い合う。

 

 ……その当分がいつまで続いてくれるのかは分からない。

 今日試験を突破した。

 突破した筈だ。

 だけど俺達が踏み止まれたのは本当に特殊なケースで。

 もしかするとまだまだ問題は山積みな気がするけれど……それでも。


 せめて今日ぐらいは、もう難しい事を考えなくたっていいだろう。

 勝ち取った報酬を噛み締めたってバチは当たらない筈だ。



   ◇




 そして翌々日。

 休み明け。


「よし、行くか!」


「うん!」


 追試を無事突破した俺達の、自分達ですら内心歩めると思っていなかったのかもしれない学園生活の続きが始まろうとしていた。

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