12 大人として当然の行動
「だ、誰だ貴様は!? 教員ではないな!? もしや部外者か!」
そう言ってハゲは魔術を発動させ、自身の周囲に背丈2メートル程のより人型に近いゴーレムを作り出す。
……試験用ではなくガチな奴だろう。
それこそ今の奴とは比べ物にならない程強い奴。
「わ、ちょ! 関係者です関係者! でなきゃこんな所に堂々と一人で顔を出しませんって。だからそんな物騒な物しまってしまって」
一応は構えを取りながらも男は弁解を始め、やがて何かに気付いたようにポケットから名刺のような物を取り出す。
「あ、ほらこれ! 職員証! 勤務は休み明けからですけど、一応書類上では今日から教員なんですよ。転任してきまして……そうだ、もしアレなら人事部の方に照会掛けて貰えば――」
「いい。それを貸せ」
「ど、どうぞ」
「ふん」
そして男からこの学園の関係者である事を示す職員証を半ば奪うような勢いで受け取ったハゲは、何かの魔術を使った後、自身が作り出した二体のゴーレムを消滅させてから言う。
「偽装された物ではなさそうだな。ブルーノ・アルバーニ。覚えておこう……礼儀を知らん人間とな」
「え? 俺何かしましたっけ?」
「突然現れた若造の癖に、私の判断を無茶苦茶だと言ったな。あれは――」
「いや無茶苦茶でしょう。新入りの若造だったらそれを見逃せと?」
ブルーノって名前らしい転任してきた教師は、ハゲの言葉を遮って間髪入れずにそう言い放つ。
「というか判断云々以前に教育者として言動が色々と無茶苦茶でしょうよ。いや、教育者以前に大人としておかしいというか……まあ魔術師には高いプライドが暴走させてるような馬鹿は大勢いるんで、案外あなたみたいなのがスタンダードなのかもしれないですけど」
煽る煽る。
超煽る。
「な、なんだお前! 失礼にも程があるぞ! 私に喧嘩を売りにきたのか!」
当然ハゲは怒号を上げた訳だけど、ブルーノ先生は涼しい表情のままで言う。
「そんな事で態々トラブルは起こしませんよ、子供じゃないんですから。その辺の感情はある程度コントロールできているつもりです。だから、そういうのじゃないですよ」
そして一拍空けてからブルーノ先生は言い放った。
「子供が私的感情で不当な評価を下されようとしてるんです。それに対して異を唱えるのは魔術師だとか教師だとかそんな肩書は関係なく、大人として当然の行動でしょう」
正論を叩きつけるように、静かに、それでも重い声音で。
「……」
な、なんかよく分からねえけど、この人俺達の味方みてえだぞ!?
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