第34話 何のために生まれたのか

「起きた?剛」

「っ……ここは」


目が覚めるとそこは医務室のベッドの上。

徐々に意識が目覚めていき、体を起こす。

体に痛みはないのでただ単に寝ていただけらしい。


「剛!?大丈夫!?」

「うおっ、幸か」

「大丈夫なの?凄くうなされてたけど……」

「うなされてた……ああ、確かに納得」

「とりあえず怪我も何もないし良かったよ。今回の訓練で何か進捗は生まれた?」


眠っている間見たあの夢。

確かにあの内容を鑑みれば、うなされていたのも納得だ。


「俺、ちょっとだけ過去の事思い出したかもしれない」

「過去って、剛が覚えてないって言ってたあの?」

「ああ。その片鱗を、俺は夢で見たんだと思う」

「……その話、聞かせてくれる?剛」


翔が真剣な面持ちで俺に持ちかける。

俺はそれに頷いて話し始めた。


「まず、前に翔が言ってた俺が昔レボルブの人間だったかもって話は間違いないと思う」

「と言うと?」

「夢に出てきたおじさんがコーストの打倒がどうとか言ってた。ここと敵対してるのはレボルブくらいだろ?」

「なるほどね。でも、そもそもだけどそれが剛の過去って確証はあるの?」

「確証って程のもんはない。ガラスの向こうにいた少年が剛って名付けられていたし、プログラムがどうとか言ってたからそういうことなんだろうとは思うけどさ」

「……OK。その前提で話をしよう。他に気になる点は?」

「ある。白衣の男が何人かいたんだが、その中に大風博士って呼ばれてる人がいたんだ。他の人の口ぶりから察するに、その研究とやらに深く関わった人間みたいだ」

「大風って、剛の名字と同じだよね?」

「ああ。俺の名字は大風剛だ」

「了解だよ、ところで僕も引っ掛かるとこがあるんだ。剛自身について覚えてる限りの情報を教えて欲しい」

「分かった」


俺は、翔に覚えてる限り俺の事を話した。

中二より過去の事は覚えてなくて、親父に拾われたらしいこと。

食堂の手伝いをしながらのんびり過ごしたこと。

そして今年の夏。

……思えば、もう数週間前の話になる。

日常と決別して、ここにいること。


「……ちょっと、残酷かな?」

「どうしたんだ?翔」

「ううん、正直に話すべきだよね。剛、よく聞いてほしい」

「どうしたんだ?」

「以前聞いたことがあるんだ。レボルブには世界でも一二を争う優れた科学者が居たけど、突然組織を抜け出したって。でもその科学者が組織に残したものの一つが、剛に埋め込まれているであろうチップの技術だって」

「そんな話が?」

「ああ。そしてその科学者がレボルブを抜け出したと言われる時期は、剛がその親父さんに拾われたという時期と合致する。そして、僕が君と初めて出会った夜。カケルがあそこで敵と戦闘してたんだけど、本来あの組織はあんなとこに兵士を出してきたりしないんだ。つまり、あの近辺にはわざわざレボルブが兵を引っ張ってくる理由があるって事になる」

「……」


もう、翔の言いたいことは分かっていた。

その科学者の正体。

少なからず、俺には馴染みのある人物。

全く、俺の過去といい色んな事が一気に起きすぎてパンクしそうだ。

もう衝撃を受ける気力もない。

そう、その科学者の正体は…


「その科学者は、恐らく君の親父さんだよ」

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