第20話 仲間たち
「君は、何のために戦う?」
意味深ではあれど、質問の内容はごく単純。
俺は何のために戦うのか。
考える必要はない。
答えはもう出ているから。
「俺は、幸のために戦う」
即答。
俺の思考に曇りはない。
晴れやかな空のように暗がりはない。
ただ、差し込む陽光は確かに弱いが。
「なるほど、愛だな」
からかうようにフッと笑うおっちゃん。
やめろ、真面目に答えたのに恥ずかしい。
「とりあえず、儂は君を歓迎するよ。よろしく頼む」
「ああ、よろしく」
「一応は上司と部下だが、別にこれまで通りの接し方で構わない。皆そうしている」
「そっか」
「ではさっきも幸君に言ったから覚えていると思うが、廊下を出て左側二番目の扉が共有スペースだ。そこで皆に自己紹介をしてくれ」
「了解」
そうして部屋を去る。
左側二番目の扉を開くと、そこは……
「……今日こそ決着にしようぜ」
「うん、始めよっか」
何やら剣呑な雰囲気に包まれていた。
周囲でそれを眺める数名は息を飲んで見守っていて……あれ?幸も混じってる?
しかしそんな雰囲気で始まるのは何かと言うと……
「「スピード!!」」
「トランプかよ!!」
「「黙れ(って)!気が散るわ(から)!!」」
驚くほど息ピッタリな二人は、興醒めと言った感じで俺の前に来る。
片方は知らないが、もう片方には見覚えが。
「あれ、剛じゃねえか」
「カケルだったのか」
「穂ノ原で良いよな?がこの部屋に来た時点で分かっちゃいたがあれか、ここに留まる事になったんだな?」
コクりと頷く。
「みんな!穂ノ原と一緒に来た新入りだ!」
全員が俺のもとへと寄ってきた。
しかし何となく敵意がないのは分かる。
仲良くやっていけそうで良かった。
「えっと、大風剛。17で、食堂の店主に拾われて養子になった。それより前の事は覚えてない。料理は得意だから、手伝えそうだったら言ってくれ」
俺の自己紹介の後に一人一人続くように自己紹介が始まる。
「はじめまして、あたしは
握手を交わす。
自己紹介の時点でフレンドリーで改めて安心した。
「
望月は眼鏡をクイっと動かして紹介を終える。
……なんか、見た目と雰囲気の落ち着きに対して炎って、荒々しい名前だな。
「
ほう、きのこ派とは……
実を言うと、俺もきのこ派であるのでかなり嬉しい。
なんだかんだたけのこの方が多数派だし、きのこ派仲間は案外見つからないものだ。
「今ここにいない奴も何人かいるけど、みんないい奴だから安心してくれ」
「それはよかった」
「んじゃ、最後に俺だな」
あ、そうだ。
そういえばカケルとはなんだかんだ自己紹介もできていなかった。
「俺はカケル。名前はまだない。今後飯を頼むことはあるかもしれないけど、梅干しはホントに食えないからそこは…な?」
「おう、覚えとく。てか名前はまだないって何だよ」
「ありがとな。っとそっか、これの説明しないわけにはいかないな」
カケルは大切なことを忘れていたという風な反応をして静かに目を瞑った。
その瞼が開かれた時、俺の眼前にいたのは……
「やあ、剛」
「……翔?」
俺が最初に出会った、穏やかな方の翔だった。
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