第18話 新たな未来

「翔なのか!?」


目の前には確かに翔が立っていた。

見てくれは完全に翔なのだ。

しかし、声色と雰囲気が全く違う。

翔だけど翔じゃない。

そんなものを見ているような気がする。


「話は後だ、あんたが剛か?」

「あ、ああ……」

「じゃあ話は早いな、後ろの女も一緒に逃げるぞ」


混乱しているところに催促をかけられ、余計に混乱する。

確かにこの急展開ぶりは翔っぽさを感じる。

するとうずくまっていたさっきの青年が立ち上が……

ってえ?待って?何であいつうずくまってるんだ?


「久しぶりに会って早々全力でグーとは相変わらずだな、カケル?」

「まだ三ヶ月しか経ってねえだろ、そしてさよならだ。二度と会いたくねえよ」


顔見知りなのか?

いや、雰囲気を見るに明らかに敵同士だが。

そして翔は俺の方へ振り返って。


「逃げるぞ!ついてこい!」

「へ?お、おう!」


とりあえず、また幸の手を握って走り出した翔についていく。

いや、翔なのかどうかは怪しいが。


「……オレだ、B地点に出迎え頼む」

「何してるんだ?」


おもむろに何かを話し出した翔(?)を疑問に思って問いかける。


「オレがいてる組織のお出迎え係だよ。所定の位置まで行ったら出迎えてくれる」

「また組織かよ……」


頭を抱えてしまう。

本当に意味が分からん。

幸も全く会話に着いていけていない半分恐怖半分といった様子だった。


「まあ組織っちゃ組織なんだが、人数少ないし部隊って方がイメージとしては近いな」

「なるほど、結局分かんないや」

「おっと、そろそろ所定のポイントだ」


夜なのであまり見えないが、目を凝らすと遠くの方に一人少女が立っていた。

走って近くへたどり着くと、少女は俺たちに話しかける。


「お待ちしておりました」

「おう、サンキューな端寺はじでら

「いえ、問題ありません。行きましょう」


行くってどこに?

そう問おうとした次の瞬間。


「え?」


俺は、見知らぬ場所に立っていた。

廊下であるということは壁にいくつか扉が付いている事から分かるものの、それ以外はさっぱりだ。


「あーそっか、能力とか多分あんま知らねえだろ?」

「あ、ああ……」

「じゃあ先に行く前に詳しく説明するよ。端寺は戻っててくれ」

「はい」


静かに戻っていく。

どこか無機質な少女だと感じた。

何か、空虚なものを彼女感じるからだ。

しかしそれは一旦置いておこう。

今は能力について知ることが先決だ。


「能力ってのは、人間の細胞が突然変異を起こした結果生まれたもんだ。その突然変異そのものは割とあることだが、能力を持つ細胞が体に適合して初めて能力が使える」

「なるほど」

「さっき端寺が使ったのは瞬間移動で、それを使って俺らの拠点に来たってわけ。だけど能力には個々に違いがあって、例えば俺は光速で移動したり雷落としたり出来る」

「さらっと凄いこと言ってない?」

「気のせいだ。まあ俺みたいに、複数の能力を同時に持ってる場合もある。説明はこんなとこだ」

「そっか、ありがとな」


能力者について大体は把握できた。

疑問が一つ晴れてちょっとスッキリする。

でもまだ疑問は残っている。


「この組織ってなんなんだ?」

「それは奥の部屋に行けば分かる、行きな」

「ありがとう」

「じゃあ、多分また後で会うだろ」

「おう」


未だ困惑の晴れない幸を連れて、俺は奥の部屋へと足を踏み入れた。






「……いらっしゃい、剛君」

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