第11話 過去は未来に、思いは胸に

「反省って、なんで…」


理解が追いつかなかった。

いや、イブキが何を言ってるのかはわかるんだ。

確かに俺は酷い結末を迎えた。

その反省をしようって言いたいのはわかる。

でも、理由がわからない。

そもそもなんであの結末を迎えるまでの俺を知ってるんだよ…?


「なら、もう少し分かりやすく言おう」


どうやら分かりやすく言ってくれるらしい。





















「君には、やり直す権利がある」

「………え?」

「権利というか、そうして貰わないと困るかな」


イブキが言い放った衝撃の一言。

それは、俺を混乱させるには十分だった。

でもそれと同時に、俺は希望を貰った。


「やり…直す…?」

「ああ、君があの女の子と過ごしたこの時間」

「それを、再び」

「本当なのか…?」


もう一度、あの時間をやり直せる。

幸と過ごす時間を、手に入れられるかもしれない。


「嘘を言う理由もないよ」

「まぁ、それもそうか…」

「それに、言ったでしょ?」

「そうして貰わないと困るって」


困る…?


「困るってどうして」

「それはその内わかるよ」


それは教えてくれないらしい。


「じゃあ本題に戻ろうか」

「何故、あのような結末になってしまったのか」


唐突に反省会がスタート。


「思い当たる節は?」

「思い当たる節か…」


記憶をたどってみる。

頭にあるみんなと俺の言葉を、行動を一つ一つ、一言一句、一挙手一投足手繰り寄せる。


「…何もない」

「じゃあきっと、それが原因だね」


それが原因?

どういうことだろうか。


「夏祭りの時」

「あのいくつもの屍が積み上げられた惨状」

「先に言っておくと、あれはほぼ避けられない」

「でも、あの場を脱出する糸口はある」

「なんだって…?」

「けど君は、それを掴めなかった」


あの場を抜け出す糸口…!?

逃げ場は一切なさそうなあの場で、そんなものがあったのか!?


「それはなんなんだ!?」

「…それは、答えられない」

「そういう決まりみたいなものなんだよ」

「そうなのか…」

「だけど、前とは違う選択をすることだね」

「その糸口は、結構単純だよ」

「なるほど」

「以上、反省会終わり!」


唐突に始まった反省会は、これまた唐突に終わった。


「じゃあ、頑張ってね」

「ああ…ありがとな」

「いいよいいよ」

「あ、そうだ」

「ヒロ君によろしく言っといて」

「ヒロ君?」

「じゃあ、またね」


そして、俺の意識はまた闇に落ちた。

闇を通り抜けて、その先に光が見える。

俺も思わなかった。

いや、思いたくなかったのかもしれない。

この感覚を、飽きるほど体験することになるとは。




「…八月一日」

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